ジャパン・イーエム・ソリューションズ

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ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社
Japan E.M.Solutions Co., Ltd.
種類 株式会社
本社所在地 日本の旗 日本
673-1447
兵庫県加東市佐保35番
設立 2018年1月16日
業種 電気機器
事業内容 携帯情報端末の開発・製造
コンピュータ周辺装置の開発・製造
代表者 代表取締役社長 髙橋英明
資本金 16億5,250万円
(2021年4月1日現在)[1]
主要株主 ポラリス・キャピタル・グループ 100%[1]
外部リンク https://www.j-em-s.com/
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ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社(Japan E.M.Solutions Co., Ltd.、JEMS)は、兵庫県加東市に本社を置く日本の電子機器製造メーカー。特にスマートフォンの製造で知られており、2023年時点でスマートフォンの製造を行う国内最後の工場であるJEMS本社工場(兵庫県加東市)を抱える。

2023年5月30日、スマホの開発・販売部門であるFCNT、FCNTおよびJEMSの親会社であるREINOWAホールディングスとともに、東京地裁へ民事再生法の適用を申請した[2]。JEMS単体の負債は約613億円、グループ全体の負債は約1432億円。FCNTは即日事業を停止したが、JEMSはエンデバー・ユナイテッドなどがスポンサーとなり、事業が継続される見込み。

概要[編集]

JEMSが2023年まで製造していた携帯電話「らくらく」シリーズ
JEMSが製造した2013年当時のドコモのフラッグシップ「ARROWS X」シリーズ

富士通の携帯電話の製造・修理部門を分社化して2018年に設立された。

Made in Japanにこだわったものづくり」を掲げ、富士通FCNTなどからの業務受託(ODMEMS)を主な事業として、タブレット携帯電話、IoT機器、カラオケ機器などの製造・修理を行っている。

敷地は、2棟の工場に加え、福利厚生の為にテニスコートと体育館が併設されている。スマホの製造を自動で行うことが可能だが、あえてスタッフが確認するというダブルチェックの体制を取っているため、製品の信頼性が高い。高品質で高信頼という、これからの日本の工場の姿を象徴するものだと富士通は考えている[3]

旧 ジャパン・イーエム・ソリューションズ[編集]

1984年に富士通株式会社の子会社として設立された、富士通周辺機株式会社の本社工場(現・JEMS本社工場、兵庫県加東市)を継承する。富士通グループの戦略生産拠点として、2007年より携帯電話の製造を開始[4]。2014年に富士通那須工場における携帯電話の製造が終了し、富士通の携帯電話製造部門は富士通周辺機の本社工場に集約された。

富士通の携帯電話の開発・販売部門を2016年に分社化したFCNTより業務を受託し、FCNTが事業停止する2023年までスマートフォンの「らくらく」シリーズおよび「arrows」シリーズの製造・修理を行っていた。また、2021年に京セラが北海道北見工場におけるスマホの製造を終了したことに伴い、スマートフォンの製造を行う国内最後の工場として、京セラのスマホや、京セラが受託したスマホ(京セラがバルミューダから受託したバルミューダフォンなど)の製造もおこなっていた。

JEMSは、富士通が2001年より展開を開始し、2022年時点で累計3700万台の販売台数を誇った携帯電話「らくらく」シリーズを2007年より製造していた。特に2012年より製造を開始したドコモのスマホ「らくらくスマートフォン」シリーズは、画面に「電話」「dメニュー」などのアイコンが大きく見やすく表示され、アイコンを強く長く押さないと反応しない(物理ボタンに慣れた人に適したデザインで、誤タップを防ぐ)など、スマホという概念やタッチパネルに不慣れなシニア層でも解りやすくて使いやすい製品としてヒットし、2022年時点で累計770万台を超える主力製品となった[5]

2011年より展開を開始したスマートフォンの「ARROWS」シリーズ、特にフラッグシップ機の「ARROWS X」シリーズは、高精細ディスプレイや指紋センサーなどの高機能と、「MADE IN JAPAN」の富士通製電池パックを搭載するなどの信頼性で高い評価を得た[6]。2017年より展開した「arrows Be」シリーズは、2万円台の低価格と、1.5mからコンクリートに落としても割れない、洗剤で洗えるなど、高性能・高耐久で評価が高かった(当時は評価されなかったが、コロナ禍の2020年に「洗えるスマホ」として脚光を浴びた[7])。2021年に鳴り物入りで携帯電話に参入したバルミューダの「バルミューダフォン」は、バルミューダの寺尾玄社長が自らデザインした美しい曲線を描く筐体に基板を収容するため、1枚のメイン基板で構成される一般的なスマホと違って複数のサブ基板に分割されるなど、京セラが設計した極めて複雑な構造だったが、JEMSが製造を実現し、価格は他社のハイエンド並みの14万円程度に抑えた。いずれも、販売台数は伸ばせず、FCNTが事業を停止する2023年まで「らくらく」シリーズがJEMSの携帯電話の主力だった。

ちなみに、長らくJEMSでのみスマホを製造していたFCNTは、2019年の「arrows U」より外部工場のODMを採用し、例えば2021年に発売され、1年で100万台を超えるヒット機となった「arrows We」は開発・製造共に中国の工場で行ったODMだった[8]。中国工場のODMでは、中国人とのコミュニケーションが難しいという問題があったが、FCNTの品質保証担当者の尽力により、初期の製品より「洗えるスマホ」などの「日本品質」を実現できた。またJEMS本社工場でもベトナム人などの外国人が増えており、末期にはその差は埋まっていた。

2023年5月12日、JEMSが製造する「バルミューダフォン」ブランドのスマホを展開していたバルミューダがスマートフォン事業からの撤退を発表。同月16日、JEMSが製造する「TORQUE」ブランドのスマホを展開していた京セラが2025年をもって個人向けスマートフォン事業からの撤退を発表(後に「TORQUE」シリーズのみ個人向けを継続と発表)。同月30日、JEMSが受託する「arrows」のブランドのスマホを展開していたFCNTが民事再生法の適用を申請し、事業を停止。同時にFCNTのグループ会社であるJEMSも民事再生法の適用を申請した。

新 ジャパン・イーエム・ソリューションズ[編集]

2023年5月30日、エンデバー・ユナイテッド、京セラ電通国際情報サービスの3社が、事業停止したFCNTに代わってJEMSのスポンサーに名乗りを上げた。[9]

同年7月、正式に3社共同で出資・設立した「エンデバー・ユナイテッド・パートナーズ・29株式会社」(EUP29)へ事業継承。

同年8月、EUP29の商号をジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社に変更。同時に旧ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社の商号を佐保管財株式会社に変更した。また、事業継承の際に「FCNTの開発する携帯端末の製造・修理事業は含みません」と明記したことにより、長らく続いたFCNT(旧 富士通コネクテッドテクノロジーズ)からのスマートフォン製造から撤退することになった[10]

2024年3月、スペインのバルセロナで開催されたMWC24にて、2023年に国内スマートフォン・フィーチャーフォン市場に参入した米国企業「Orbic」が自社の生産拠点を中国、インドに加えアメリカと日本にも構えると発表し、日本の生産拠点としてJEMSに委託開始した。これによりJEMSが再びスマートフォン・フィーチャーフォンの製造を担当することとなった。[11][12]

トリビア[編集]

  • 加東市ふるさと納税を行うと、返礼品として当社で製造されているスマホが貰える場合がある。例えば2022年度は「バルミューダフォン」が貰えた[13]

関連項目[編集]

  • FCNT - 富士通の携帯電話の開発・販売部門を分社化したもの(旧:富士通コネクテッドテクノロジーズ)
  • 富士通アイソテック - 2019年に富士通周辺機よりプリンターの製造・修理部門を移管された。2021年にPCの製造部門を島根富士通に移管。
  • 島根富士通 - 富士通のPCの開発・販売部門を分社化した富士通クライアントコンピューティングの子会社。2020年に富士通周辺機よりPCの製造・修理部門を移管され、同時に富士通周辺機は解散した。

参照[編集]

  1. ^ a b 【会社概要】ジャパン・イーエム・ソリューションズ株式会社(JEMS)|Made in JapanのEMS・ODM”. ジャパン・イーエム・ソリューションズ. 2022年6月30日閲覧。
  2. ^ 倒産速報 帝国データバンク
  3. ^ “百戦錬磨”のジャパン・メイド・スマホ「arrows Be3」の秘密 富士通
  4. ^ 【大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」】タブレット/スマートフォンの戦略生産拠点、富士通周辺機を訪ねる ~先進的な自動化ラインで高品質、高効率を実現 - PC Watch
  5. ^ 「らくらくスマートフォン」軸にサービス強化、FCNTのシニア戦略は奏功するか 日経クロステック(xTECH)
  6. ^ 1.7GHz4コア&フルHD液晶のARROWS Xを使ってみた! ASCII.jp
  7. ^ コロナ禍で脚光を浴びる「洗えるスマホ」とは? 近年登場モデルは5Gにも対応 Real Sound
  8. ^ ASCII.jp:「日本品質」を維持したarrows Weが大ヒット! FCNTの開発・品質保証担当者に聞く、ODM製造の裏側 ASCII
  9. ^ 「らくらくホン」民事再生 負債総額1200億円 - 日本経済新聞
  10. ^ スポンサーとの間の事業譲渡契約締結のお知らせ”. 2024年3月4日閲覧。
  11. ^ ASCII. “昨年日本上陸のOrbic、KaiOS搭載ケータイの国内投入に5Gイエデンワ、旧富士通工場活用での「Made in Japan」展開も”. 週刊アスキー. 2024年3月3日閲覧。
  12. ^ 株式会社インプレス (2024年3月1日). “【MWC Barcelona 2024】 Orbicがフィーチャーフォンを日本で発売、日本に生産拠点も”. ケータイ Watch. 2024年3月3日閲覧。
  13. ^ ふるさと納税でバルミューダの「BALMUDA Phone」など、スマホ関連の返礼品がラインアップ - ケータイ Watch

外部リンク[編集]