カヒル級コルベット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カヒル級コルベット
基本情報
種別 コルベット
運用者  オマーン海軍
就役期間 1996年 - 現在
前級 ドファール級
次級 ハリーフ級英語版
要目
基準排水量 1,185トン
満載排水量 1,450トン
全長 94.5 m
11.07 m
吃水 3.25 m
機関方式 CODAD方式
主機 クロスリー-ピルスティク16PA6 V280STC
ディーゼルエンジン×4基
推進器 可変ピッチ・プロペラ×2軸
出力 32,000馬力
速力 31ノット
航続距離 5,500海里 (12kt巡航時)
乗員 135名
兵装62口径76mm単装速射砲×1基
90口径20mm単装機銃×2基
クロタル短SAM 8連装発射機×1基
エグゾセMM40 SSM×8発
レーダーMW-08 3次元
・1007型 航法用
電子戦
対抗手段
・DR-3000S電波探知装置
・古野FD527方向探知機
・スーパーバリケード 12連装デコイ発射機×2基
テンプレートを表示

カヒル級コルベット英語: Qahir-class corvette)は、オマーン海軍コルベットの艦級。イギリスヴォスパー・ソーニクロフト社のヴィジランス型の設計を採用している。ムヒート計画型(Project Muheet)、あるいは83号計画型(Project Type 83)とも称される[1][2][3][4]

来歴[編集]

オマーンアラビア半島の東端に位置し、アラビア海インド洋)とオマーン湾に面するほか、石油ルートとして著名なホルムズ海峡の航路もオマーン領海内を通ることから、イギリスより小さい程度の小国ながら、海軍力の整備が求められている。特にホルムズ海峡の分離通航帯での航路哨戒は重要任務とされる。ドファール解放戦線に対する対反乱作戦ドファールの反乱英語版)では、キャラバン隊妨害のための艦砲射撃を行っていたものの、これは有効性が不明瞭で、むしろ地上部隊への後方支援が重要であった[1]

1980年代より、艦隊の近代化が着手された。まず1980年より、ヴォスパー・ソーニクロフト社のヴィタ型高速戦闘艇4隻が発注され、1982年よりドファール級として就役を開始した。大型水上戦闘艦としては、アメリカ海軍を退役したノックス級フリゲートの取得が検討されたものの、これは実現せず、1992年4月5日、やはりヴォスパー・ソーニクロフト社のヴィジランス型コルベット2隻が発注された。これによって建造されたのが本級である[1][2][3][4]

設計[編集]

上記の経緯より、本級はヴィジランス型の設計を採用している。これは同社の輸出用コルベットとしては第2世代にあたる新しい設計であった[注 1][3]。設計にあたっては、ステルス性への配慮が全体に導入された。アルミニウム合金製の上部構造物はレーダー反射断面積低減を図った形状となっており、電波吸収体も広範に塗布されている[2]。また煙突には赤外線放射の低減措置が導入された[4]

主機としては、16気筒のクロスリー-ピルスティク16PA6 V280STCディーゼルエンジン4基をCODAD方式で組み合わせて、KaMeWa社製の可変ピッチ・プロペラを駆動する方式とされた[2]。また電源としては、MTU RV183 TF51ディーゼルエンジンを原動機とする主発電機(出力400キロワット)3基と、MTU 6V183 AA51ディーゼルエンジンを原動機とする非常発電機(出力70キロワット)1基が搭載された。なお燃料搭載量は156トン、清水搭載量は19トンである。減揺装置としてフィンスタビライザーを備えている[4]

装備[編集]

分散システム化されたSEWACO-FD戦術情報処理装置を搭載し[4]、リンクYによる戦術データ・リンクに対応したほか、衛星通信装置も搭載された[1][2]

レーダーとしては3次元式のMW-08と航法用のケルビン-ヒューズ1007が、また電波探知装置(ESM)としてはDR-3000S1が搭載された[4]ソナーはもたないが、ATAS曳航ソナーの追加装備を織り込んだ設計となっている。この場合、艦尾側に8トンの重量が追加されることになるが、艦の運動性能の悪化や艦尾甲板のヘリコプター甲板への干渉といった悪影響はないものとされる[2]

艦砲として、艦首甲板の甲板室上に62口径76mm単装速射砲(76mmスーパーラピッド砲)を備えるほか、艦橋直後両舷に90口径20mm単装機銃(GAM-BO1)を備える。砲の射撃指揮のため、艦橋上にSTING追尾レーダーが設置されている。また後部上部構造物の後端部にはクロタル個艦防空ミサイルの8連装発射機が、DRBV-51Cミサイル射撃指揮装置はその直前に設置された。艦橋直前にはエグゾセM40艦対艦ミサイルの4連装発射筒2基が設置された。対潜兵器はもたないが、上記のATAS曳航ソナーとあわせて、短魚雷発射管の搭載も織り込んだ設計となっている[2][4]

艦尾甲板はヘリコプター甲板とされており、シュペルピューマ級のヘリコプターの運用にも対応できる。ただし格納庫はもたない[2][4]

同型艦[編集]

# 艦名 造船所 起工 進水 就役
Q-31 カヒル・アル・アムワジ
SNV Qahir Al Amwaji
ヴォスパー・ソーニクロフト
(ウールストン, イギリス)
1993年5月21日 1994年9月21日 1996年9月3日
Q-32 アル・ムアッサー
SNV Al Mua'zzar
1994年4月4日 1995年9月26日 1997年4月13日

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ヴォスパー社時代にはマーク・ナンバーで表されるフリゲートやコルベットが開発されており、ヴォスパー・ソーニクロフト社となってからもセールスは継続されていた[3]

出典[編集]

  1. ^ a b c d Gardiner 1996, pp. 296–298.
  2. ^ a b c d e f g h Saunders 2009, p. 576.
  3. ^ a b c d Friedman 2012, pp. 196–217.
  4. ^ a b c d e f g h Wertheim 2013, p. 501.

参考文献[編集]

  • Friedman, Norman (2012). British Destroyers & Frigates - The Second World War & After. Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545 
  • Gardiner, Robert (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. ISBN 978-1557501325 
  • Saunders, Stephen (2009). Jane's Fighting Ships 2009-2010. Janes Information Group. ISBN 978-0710628886 
  • Wertheim, Eric (2013). The Naval Institute Guide to Combat Fleets of the World, 16th Edition. Naval Institute Press. ISBN 978-1591149545