カダイン

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カダインKhadein)は、任天堂(開発・インテリジェントシステムズ)のコンピュータゲームファイアーエムブレム』のシリーズ作品中『暗黒竜と光の剣』(リメイク版『新・暗黒竜と光の剣』も含む)、『紋章の謎』(リメイク版『新・紋章の謎』も含む)に登場する架空の都市。

概要[編集]

アカネイア大陸北部・マーモトード砂漠南部に位置する学園都市。この地域に統一された国家は存在せず、アカネイア暦550年に大賢者・ガトーが開いた魔道学院を中心とする学園都市には各国の子弟が留学しており、高度な自治体制を敷くと共にカダイン魔道軍と称する独自の防衛組織も有している。

また、マーモトード砂漠の北部にはかつて、暗黒魔道を究める者たちが集ったとされる都市・テーベが在ったと伝えられている。その真偽は不明であるが、「Echoes」ではテーベの遺跡と思われる地下迷宮に入ることができる。この地下遺跡には錬金術師フォルネウスが生涯をかけ死者の仮面や新たな生命体の研究を行ったアトリエが封印されている。

人物[編集]

声優は「箱田」が『GファンタジーコミックCDコレクション』(原作・箱田真紀)・「電撃」が『ファイアーエムブレム 旅立ちの章』(著者・あかほりさとる)・「ラジオ」がラジオドラマ『ファイアーエムブレム 黎明編/紫嵐編』(原作・佐野真砂輝&わたなべ京)・「OVA」が『ファイアーエムブレム 紋章の謎 (OVA)』(ケイエスエス)・「#FE」が『幻影異聞録♯FEアトラス)・「ヒーローズ」が『ファイアーエムブレム ヒーローズ』・「無双」が『ファイアーエムブレム無双』のキャストを指す。

ガトー (Gatoh)
魔道学院を設立した神竜族。詳細はマムクート#神竜族を参照。
ガーネフ (Garnef)
声 - 増田有宏(電撃) / 稲葉実(箱田) / 青野武(OVA) / 成田剣(#FE[1]・無双・ヒーローズ)
クラスはソーサラー(『暗黒竜』では司祭、『紋章』ではダークマージ)。『暗黒竜』、『紋章』、『新・暗黒竜』、『新・紋章』に登場。
カダイン最高司祭ミロアと共に大賢者ガトーの下で魔道の修行に勤めていた。ウェンデル曰く「正義感の強い、立派な若者であった」というが、ガトーに心の弱さを見抜かれ、オーラの魔道書とカダインをミロアに委ねられたことから、嫉妬と憎しみに狂うことになる。ガトーから「闇のオーブ」を盗み[2]、悪霊を呼ぶ暗黒魔法マフーを生成。同時に闇のオーブの影響で残忍な性格に豹変した。戦闘以外でも、姿を変えるまやかしの術や、精神を支配する催眠術などの魔道を駆使する高い技量を身に付けている。
暗黒戦争編では世界征服の野望の為にミロアを殺害してカダインを支配下に置き、ドルーアの地に復活した地竜王メディウスと結託。いずれはドルーア王国をも従えようとメディウスを倒しうる神剣ファルシオンをアリティアから持ち去り(OVA版ではマルスの父コーネリアスの命を奪った際に奪取)、死者を復活させるオームの杖を使用できるエリス王女をアリティアから連れ去ってテーベの塔で監禁していた。そして自らの脅威となる魔法を封じるため、神竜族の王女チキを攫って術をかけ、ラーマン寺院に安置された光と星のオーブを守らせていた。さらには決起したマルスらを利用して、カミュやミシェイルといった後々自らの邪魔になる人物を亡き者にし、あわよくばグラディウスなどの武具も手中に収めようと画策していた。
物語中盤、奪われたファルシオンを取り戻す為にカダインへ攻めてきたマルス軍をマフーの書で迎え撃ち、その圧倒的な力で退けるも古代都市テーベへと誘う言葉を残して撤退。終盤、テーベの塔にて分身の術(『新・暗黒竜』では魔道器械の力を借りていた)で迎え撃つものの、大賢者ガトーの助力を得たマルス軍によって倒されてしまう。しかし、肉体は滅びても魂は闇のオーブに取り込まれ、邪悪な怨念となって生き続けることになり、後に精神体として復活(そのため『新・紋章』の一部シーンでは赤いホログラムのようになって登場する)。
英雄戦争編開始前の時点で完全復活を果たし、かつての部下だった司祭たちを蘇らせて暗躍を始める。その目的は世界の征服ではなく滅びへと変化しており、その為に暗黒竜へと変体したメディウスの早期復活を目論む。嫉妬心に苦悩するハーディンに商人の姿で近づき、闇のオーブを与えて人格を狂わせ、自らの手駒とした。暗黒皇帝となったハーディンによって再び大陸全土を巻き込む戦乱が起こされると、その裏で暗黒竜へ捧げる生贄にするために3人の穢れ無き高貴なシスター(司祭)を拉致し、ハーディンにニーナを差し出させた。そして、神剣ファルシオンやスターライトの魔道書などの障害となりうるアイテムを奪取している。『新・紋章』ではさらに孤児院の院長エレミヤを洗脳して自分の配下となる暗殺組織を作らせ、エルレーンをそそのかしアカネイア軍に加担させていたなど更なる悪行を見せており、英雄戦争における事件には元凶として全てガーネフが関わっていることがより露となった。
終盤、マルス軍によってハーディンが討たれ、その直後にニーナに化けて騙し討ちを試みるが、完成した封印の盾によって正体を暴かれて失敗し、竜の祭壇にて暗黒竜復活の儀式を急ぐ。しかし、妹マリアを救出しに来たミシェイルを撃退し致命傷を負わせたものの、代わりにスターライトの魔道書を奪われおり、それがマルスの手に渡ったことで再び倒されることになった。そして、復活させようとしたメディウスもマルスの手によって倒され、ガーネフの野望は辛くも水際で絶たれた。なお、ガーネフはハーディンとは違い闇のオーブによって完全に心が変質してしまっており、最後まで元の性格に戻ることはなかった。
容姿は不気味な悪の司祭らしくシリーズ通して人外だと思わせるような描かれ方をしている。『ファイアーエムブレムヒーローズ』ではそれらと比較して年相応の人間らしい姿になった。シリーズ公式サイト『ファイアーエムブレムワールド』で『新・暗黒竜』発売に際して行われたキャラクターイラスト募集では、なぜか投稿・採用されたイラスト全てがギャグイラストであった。
『#FE』ではミラージュとして登場。メインストーリーの黒幕の一人であり、ミラージュマスター旗中ヤツフサと共に、東京に暗黒竜降臨を目論む。
ミロア (Miloa)
声 - 麻生智久(箱田)
リンダの父で、カダイン最高司祭にしてアカネイア王国司祭長でもあった人物。物語開始時点で既に故人となっているため回想を含めて作中の登場はない。かつてはガーネフと共に大賢者ガトーの最も優れた弟子の一人だった。ガトーからオーラの魔道書とカダインを与えられたことでガーネフの嫉妬を買い、暗黒戦争初期に計画の障害ということもあってガーネフに殺害されることになった。娘リンダを魔道士として育て上げ、生前の内にオーラの魔道書を継承させている。
DSリメイク版である『新・暗黒竜』『新・紋章』ではオーラは女性専用の魔法(FC版、SFC版ではリンダ専用魔法だったが、リンダ以外の女性魔道士も武器レベルを上げれば使用可能になった)であるのに、何故か男性であるミロアが使い手だったということになってしまったが、これに関しては『新・紋章』のリンダとマリクの会話の中で、魔道書にミロアが制約をかけたという主旨の言及がある。
ウェンデル (Wendel / Wendell)
声 - 峰恵研(箱田)
クラスは賢者(司祭)。『暗黒竜』、『紋章』、『新・暗黒竜』、『新・紋章』に登場。
カダインの司祭でかつてのエクスカリバーの使い手。マリクとエルレーンの師でもある。戦いを好む性格ではなく、たとえ自衛の為であっても魔道の力を振るうことを極力避ける。人間嫌いの大賢者ガトーから使命を賜ったことからも、優れた人格者であることが窺える。
暗黒戦争編ではガーネフの野望に加担することを嫌ってカダインを脱出。『暗黒竜』『新・暗黒竜』ではオレルアン城下の村付近で弟子のマリクと再会したことでアリティア軍に合流した。『紋章』第1部では(『暗黒竜』のマップが削除された都合で)マケドニア軍に捕えられ、城内の牢獄でリカードと共に監禁されていたところをオレルアン城に突入したマルス軍に救出される。また、詳しい時期は不明だが、グルニア国王に対する人質としてガーネフに差し出され幽閉されていたユミナ王女、ユベロ王子の姉弟をカダインで救い出しており、二人の保護者となってカダインの修道院へ預けている。戦後はカダイン最高司祭に就任して復興に尽力する。
英雄戦争編ではカダインの留守を弟子二人に任せ、大賢者ガトーの命で星のかけらを探す旅に出ており、一時期マケドニアのホルム海岸に滞在していた。彼を探してホルム海岸を訪れたマルスはウェンデルには会えなかったが、ユミナ・ユベロ姉弟を保護するという当初の目的は達成する。当の本人は旅の最中にアカネイア軍に捕らえられ、グルニアにあるオルベルン城で監禁されていたがマルス軍によって救出され、星のかけら収集の協力をマルスに願い出た。カダインでは、嫉妬に狂ったエルレーンを強く窘めて改心させた。英雄戦争後はカダインの復興に全力を尽くした。ゲーム中ではジェイガンとは異なり高齢のわりに各パラメータの伸びが良い。
マリク (Marich / Merric)
声 - 佐々木望(電撃・箱田)、岡村明美(少年時代〈箱田〉) / 岩永哲哉(ラジオ) / 保志総一朗(ヒーローズ)、長妻樹里[3](少年時代)(ヒーローズ)
クラスは魔道士→賢者(司祭)。『暗黒竜』、『紋章』、『新・暗黒竜』、『新・紋章』に登場。
アリティアの貴族出身で、カダインで修行を積んでいた魔道士。風の刃を放つ伝説の魔道書エクスカリバーを使いこなし、「風の魔道士」の異名を持つ。
エリス、マルス姉弟の幼なじみで、マルスとは親友でもある。性格は穏やかで他人思い。昔は体が弱かったらしく、それ故か体を動かすよりも本を読む方が性に合っており、非常に勉強熱心。アリティアでは騎士を志す者がほとんどで、魔道士を志したマリクは周囲から冷たい視線にさらされていたが、その夢を応援してくれたエリス、マルスに恩を感じ、カダインに留学する際にエリスから貰ったお守りを大切にしている。エリスに想いを寄せており、生涯をかけて守りたい相手であることが示唆されている。
暗黒戦争編ではマルスの旅立ちを知ってマルス軍と合流するためにカダインを発ち、『暗黒竜』『新・暗黒竜』ではオレルアン辺境の村、『紋章』1部では(『暗黒竜』のマップが削除された都合で)オレルアン城下の村に滞在していたところを、村に訪れたマルスと再会した。戦後、エリスへの思いを胸に秘め、修行のために再びカダインへ戻った。
英雄戦争編ではエルレーンと共にカダインでウェンデル司祭の留守を守っていたが、英雄戦争が勃発すると、反乱の首謀者とされたマルスとの関係をエルレーンに疑われ、カダインは内紛状態となる。ウェンデルからエクスカリバーを授けられたことでエルレーンの嫉妬を買っていたこともあり、望まぬ決闘になりかけていたが、折りしもその時マルス軍と共にカダインへ戻ったウェンデルの仲裁で事なきを得、そのままマルス軍に合流した。最終盤において、暗黒竜復活の生贄とされかけているエリスに秘めていた想いを打ち明け、彼女の正気を取り戻すことに成功。戦後はパレスに魔道学院を設立し後進の育成に当たった。
『新・紋章』ではプロローグである前日編にも登場。アリティアへ帰郷中にならず者に襲われた村を発見して救助に向かい、道に迷った挙句に偶然そこに来ていた第7小隊(マイユニットたち)と合流して共闘し、その後は第7小隊の訓練にもしばらく協力していた。
『紋章』ではリンダがマリクから一方的に支援効果を受けるため、彼女から好意を寄せられていることが示唆されている。『新・暗黒竜』『新・紋章』でリンダとの会話イベントが追加され、それがより顕著になった。
『紋章』のみ、マリクが司祭に昇格すると、戦闘画面において他の人物とは異なる専用グラフィックとなる。『ファイアーエムブレムヒーローズ』での初登場は、この専用グラフィックに近い姿だったが、後に神装英雄として選択可能になった姿は魔道士に近い姿になった。
佐野&わたなべ版では、ドルーアの魔道士の幻影でマルスとエリスがドルーアの一員として身体に傷をつけられたことに非常に怒った上に、これがきっかけとなり幻影を打ち破り、更に竜王が封じた禁呪「聖剣烈風(エクスカリバー)」を習得する。レフガンディの戦いでマルスが重傷を負った時、我を忘れて魔法を使ったために「負の感情に心を奪われるな」とウェンデルに怒られてしまうなど、マルスとエリスに対しての感情の起伏が激しい。なおこの漫画では髪の色が黄色、目の色と服の色が緑になっていてオリジナルゲームとは異なっている。
シリーズ通して最初の味方陣営の魔道士ということもあり、シリーズファンの間では後の作品に多く登場する「風の魔道士」「生足魔道士」の元祖とも言われる。
エルレーン (Ellerean)
声 - 大塚剛央(ヒーローズ)
クラスは魔道士→賢者(司祭)。『紋章』(第2部)、『新・紋章』に登場。
カダインの若き魔道士。マリクと同じくウェンデルの弟子で、マリクの兄弟子に当たる。悪人ではないのだが、堅物なまでに厳格かつ捻くれた性格であり、人を思いやる気持ちが薄く自己中心的な面もあり、他人を見下すこともある(ただし恩師であるウェンデルは尊敬している)。それ故に魔道士としてマリクより優れた力を持ちながらも、ウェンデルはマリクにエクスカリバーの魔道書を継承させることとなった。エルレーンはその理由についてマリクがアリティアの貴族だからだと考えたが、マリクは「自分にその魔道書が与えられたのは、単に自分が風と相性がよかったからだ」と語っている(つまり、逆にエルレーンが風と相性がよかったならば、彼に与えられた可能性もあったということ)が、いずれにせよそのことからマリクをライバル視し強く妬み、ウェンデルの留守中にアカネイア帝国と手を組み、自分がマリクよりも上であることを証明しようと決闘を挑んだ。しかし、帰ってきたウェンデルにマリクに嫉妬する姿をガーネフと対比され、心の弱さを指摘されて改心。以後はマルス軍に参加する。
ウェンデルはこの説教の中でエルレーンを後継者と考えていたと述べており、英雄戦争後はその通りにカダインの高司祭に任命され、魔道都市の復興のため働き、以後はその厳格さが弟子思いとして尊敬を集めた。このウェンデルの処置は、マリクがいずれ祖国アリティアに帰国するであろうと見込んでのことと考えられる。ゲーム中ではHPと守備パラメータの上昇率が突出しており、最終的に魔道士らしからぬ前衛向きの能力値になる。
『新・紋章』の追加コンテンツ「風と雷」ではアカネイアと手を組んだきっかけが登場。闇の司祭たちがガーネフを復活させようとしているのをマリクと共に確認した帰り、精神体として復活したガーネフが接触してきてマリクへの嫉妬を指摘し、それをそそのかされて起こしたものであったことが判明した。
篠崎砂美著の小説版では、ガーネフとの戦いで苦戦するマリクに加勢し、2人でスターライトを放ってガーネフを倒した。
エッツェル (Etzel)
初期クラスはソーサラー。『新・暗黒竜』、『新・紋章』に登場。
旅の魔道使い。戦乱に巻き込まれて亡くなった妻アーシェラの形見をダクティルに奪われてしまったため、仕方なく従う羽目になった。気さくな好人物で口調も飄々としている。
元々はカダインにゆかりのある闇魔道士で、英雄戦争時は恩義があるというカダインの軍に加わりアリティア軍と戦っていたが、マルスに説得され、彼の「戦争を早く終わらせたい」という言葉を信じて再びアリティア軍に加わる。
戦争による悲劇を身をもって体験しているが故に平和な世を望んでいるが、自身をかばい死んでしまった妻に負い目を感じており、どこか生に対し投げやりな戦い方をする。
ヨーデル (Jodel)
クラスは司祭。『紋章』(第2部)、『新・紋章』に登場。
カダイン魔道軍の司祭。エルレーンに命令され、カダイン神殿を死守していた。だが、死に際の台詞の中ではヨーデル自身はこのエルレーンの方針に疑問を感じていた。『封印の剣』にも自軍に同名の司祭が存在する。

脚注[編集]

  1. ^ エンディングスタッフロールより。
  2. ^ 『暗黒竜』ではガーネフがマフーの書を盗んだことになっているが、『紋章の謎』では闇のオーブを盗んで、ガーネフ自らマフーの書を作ったとあり、矛盾している
  3. ^ ファイアーエムブレム ヒーローズ 超英雄 (すべてのはじまり)

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • エイプ『任天堂公式ガイドブック ファイアーエムブレム百科』小学館、1990年5月20日。ISBN 978-4-0910-4115-9 
  • 『任天堂公式ガイドブック ファイアーエムブレム紋章の謎』小学館、1994年2月20日。ISBN 978-4-0910-2465-7 
  • 『任天堂公式ガイドブック ファイアーエムブレム紋章の謎PROFESSIONAL』小学館、1994年5月20日。ISBN 978-4-0910-2476-3 
  • CB'sプロジェクト、塩田信之『ALL OF EIRE EMBLEM ファイアーエムブレム〜紋章の謎〜のすべて』宝島社、1994年3月28日。ISBN 978-4-79660-793-3 
  • 『ファイアーエムブレム・ザ・コンプリート』NTT出版、1996年5月20日。ISBN 978-4-87188-822-6 
  • 『ファイアーエムブレム』佐野真砂輝&わたなべ京、角川書店