イーゴリ・マングシェフ

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イーゴリ(またはイゴール)・レオニドヴィッチ・マングシェフ(ロシア語: Игорь Леонидович Мангушев 1986年8月16日 - 2023年2月8日)はロシアの極右政治活動家、傭兵

概要[編集]

モスクワ生まれで愛国主義者に成長し[1][2]、2009年末にスヴェトラーヤ・ルス(ロシア語: Светлая Русь、「輝けるロシア」という意味)という組織を設立した。マングシェフはスヴェトラーヤ・ルスを率いる役割として警察や移民局と連携し、ロシア連邦内の無許可住居に住む不法移民の家宅捜索を行った[3]

2012年までに、マングシェフはロシアの新興の軍事化された愛国主義運動を調整するためにE.N.O.T.コープスロシア語版英語版ロシア語: Енот)[注 1]という民間軍事会社を設立し指揮を執った(E.N.O.T.はウクライナ紛争などで戦った他、ヨーロッパ数カ国で青少年向けの軍事訓練キャンプを運営していたが、セルビアのキャンプが少年への虐待疑惑で摘発され、他にも不法行為が指摘され2019年に解散している)[4][5]

また、マングシェフは2013年までに(ワグネル・グループ創設者のエフゲニー・プリゴジンが創設した)インターネット・リサーチ・エージェンシーの従業員になり野党政治家へのネガティブキャンペーンを行っていた[6]。E.N.O.T.の解散後、マングシェフはプリゴジンの政治戦略家として働いたと言われる[7]

2022年ロシアのウクライナ侵攻にも参戦、主に対ドローン任務に従事した。最初の帰還後にナイトクラブのステージに立ち、戦地で拾ったウクライナ兵の頭蓋骨を片手に「我々は血肉を持つ人間と戦争をしているのではない」「我々は反ロシア的な国家としてのウクライナという概念と戦争をしている」と述べた[8]

死亡[編集]

マングシェフは、前線からやや離れたルハンスク州カディフカの検問所で銃撃され死亡した。至近距離から頭頂部に45度の角度で9ミリ弾を撃ち込まれており、関係者の何人かは味方からの粛清である可能性を示唆している[7]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 統一人民コミュニティー協会(Единые народные общинные товарищества)の意味。また、Енотはロシア語でアライグマを意味しており、アライグマがシンボルとなっている。

出典[編集]

  1. ^ “Notorious Russian nationalist Igor Mangushev shot dead in Ukraine” (英語). BBC News. (2023年2月8日). オリジナルの2023年2月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230208163919/https://www.bbc.com/news/world-europe-64566582 2023年2月8日閲覧。 
  2. ^ Seddon, Max; Ivanova, Polina (2022年3月18日). “Propaganda war rages as Russians face huge pressure to back invasion”. Financial Times. オリジナルの2022年5月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220512051636/https://www.ft.com/content/0a45e38c-10c8-4d7f-bc7a-4a7e5e92024e 2023年2月8日閲覧。 
  3. ^ Tumanov, Grigorii (2015年3月23日). “Послевоенные действия [Post-war actions]” (ロシア語). Kommersant. オリジナルの2022年8月21日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220821194523/https://www.kommersant.ru/doc/2688561 2023年2月8日閲覧。 
  4. ^ Никитин, Дмитрий (2018年11月9日). “ФСБ начала задерживать участников ЧВК E.N.O.T.” (ロシア語). Daily Storm. 2023年2月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月8日閲覧。
  5. ^ Wife of neo-Nazi Russian army captain calls husband's wound "failed execution attempt"” (ロシア語). The Insider (2023年2月6日). 2023年2月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年2月9日閲覧。
  6. ^ Gorham, Michael S. (2017). “Humpty Dumpty and the Troll Factory: Varieties of Verbal Subversion on the Russian-Language Internet” (英語). Zeitschrift für Slavische Philologie 73 (1): 79–103. JSTOR 26583047. オリジナルの10 February 2023時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20230210105847/https://www.jstor.org/stable/26583047 2023年2月10日閲覧。. 
  7. ^ a b ロシアの悪名高い雇い兵、ウクライナで撃ち殺される」『BBC News』、2022年8月29日。2023年8月14日閲覧。
  8. ^ 頭蓋骨を片手にウクライナ人絶滅を誓う狂信的愛国主義者」『News Week』、2022年8月29日。2023年8月14日閲覧。