イワカンスゲ

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イワカンスゲ
イワカンスゲ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
階級なし : ツユクサ類 commelinids
: イネ目 Poales
: カヤツリグサ科 Cyperaceae
: スゲ属 Carex
: イワカンスゲ C. makinoana
学名
Carex makinoana Franch. 1985
和名
イワカンスゲ

イワカンスゲ Carex makinoanaカヤツリグサ科スゲ属の植物の1つ。岩の上に大きな株を作り、細くて硬い葉をつけ、黒褐色の長い穂をつける。

特徴[編集]

全体に硬い質の多年生草本[1]。匍匐枝は出さず、密集した大きなを作る。花茎は長さ20-50cmになる。葉は質が硬くてよくざらつき、細くて葉幅は1.5-2.5mmしかない。基部の鞘は黒褐色に色づき、繊維状に細かく裂ける。

花期は4-5月で、花茎は上部がざらつき、頂小穂は雄性で単一、側小穂は2-4個あって雌性で、上部の方にやや接近してつく[2]。苞は長い鞘があり、葉身は針状となって目立たない。頂小穂は雄性で長さは3-8cm、時に10cm[3]になり、線柱形で黒褐色で柄がある。雄花鱗片は濃褐色で先端は尖る。雌性の側小穂は柱状。大きさは長さが1.5-3cm、幅4-5mmほどで、下部のものには長い柄があり、上部のものには短い柄がある[2]。雌花鱗片は濃褐色で先端には短い芒が突き出る。果胞は雌花鱗片より長く、披針形で長さ4.5-7mmに達する。表面には短い毛を密生し、基部は短い柄状となっており、先端は長い嘴状に突き出ており、その先端の口部には鋭い2本の歯状突起があるかあるいは2つに分かれている。また果胞の先端側は褐色に色づく。痩果は果胞に密に包まれており、狭楕円形で長さ3.5-4.5mm、基部には柄がある。柱頭は3つに割れる。

なお、学名はその種小名を星野他(2011)や勝山(2015)などは makinoensis としている。ここではYList[4]に従った。

分布と生育環境[編集]

四国九州に分布し、他にトカラ列島中之島宇治群島から知られ、日本固有種である[2]

渓谷や川岸の岩の上に生育する[5]。さらにはシイカシ帯の岩場、岩の多い斜面、土手などにも見られ[2]、場所によっては道路脇の切り通しや石垣などにもぎっしり生える。

分類、類似種など[編集]

本種はイワカンスゲ節 Sect. Ferrugineae に含められている[6]。この節には10種ほどが含められており、いずれも細くて硬い葉と、頂生の雄小穂、雌性の側小穂を持ち、そのいずれもが細長くて褐色に色づくもので、判別のややこしいものが含まれる。そんな中、本種はその頂生の雄小穂が黒褐色と濃い色になることと、長さが8cm、時に10cmにも達することが特徴となっている[5]。この長さは側小穂の2倍から3倍もある。雄小穂の長さで8cmというのはなかなかのもので、たとえば本種よりずっと大型になるカサスゲ(草丈1m)やミヤマシラスゲ(草丈80cm)とどっこいかまだ勝っているくらいである。同様に雄小穂が長く発達するものに同じ節のコバケイスゲ C. tenuior やアキザキバケイスゲ C. mochomuensis があり、いずれも雄小穂が10cmにもなるが、これらはそれぞれ琉球列島屋久島の固有種である。

保護の状況[編集]

環境省のレッドデータブックでは取り上げられていない。県別では鹿児島県が「分布特性上重要な種」として指定しているのみである。

出典[編集]

  1. ^ 以下、主として星野他(2011),p.406
  2. ^ a b c d 勝山(20015),p.287
  3. ^ 大橋他編(2015),p.325
  4. ^ [1]2019/08/08閲覧
  5. ^ a b 星野他(2011),p.406
  6. ^ 勝山(20015),p.282

参考文献[編集]

  • 大橋広好他編、『改定新版 日本の野生植物 1 ソテツ科~カヤツリグサ科』、(2015)、平凡社
  • 勝山輝男 (2015)『日本のスゲ 増補改訂版』(文一総合出版)
  • 星野卓二他、『日本カヤツリグサ科植物図譜』、(2011)、平凡社