イギリス鉄道139形気動車

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イギリス鉄道139形気動車
パリー・ピープル・ムーバー
スタウアブリッジ・タウン駅を出る139 002
基本情報
運用者 プレ・メトロ・オペレーションズ
ウェスト・ミッドランズ・トレインズ
ライトウェイト・コミュニティ・トランスポート
製造所 パリー・ピープル・ムーバーズ英語版
製造数 3両
運用開始 2009年
投入先 スタウアブリッジ・タウン支線英語版
主要諸元
軌間 1,435 mm
最高速度 32 km/h (20 mph)[3]
車両定員 着席20 – 25人・立席30 – 35人[1]
自重 12 t(PPM50)[2]
車体長 8.7 m(PPM50)
9.6 m(PPM60)[1]
車体幅 2.4 m[1]
車体高 3.2 m[1]
車体 ステンレス
機関 フォード DSG423 2.3 L[1][4]
機関出力 86 hp (64 kW)
備考 PPM50:999 900→139 000
PPM60:139 001 - 139 002
フライホイール:1,000 – 2,600 rpm[1]
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イギリス鉄道139形気動車(イギリスてつどう139がたきどうしゃ)はパリー・ピープル・ムーバーズ英語版製の軽量気動車PPM60に与えられたTOPS形式である[5][6][7][8]。この車両はフライホイールを用いたハイブリッド気動車であり、イギリスイングランド中部、ウェスト・ミッドランズスタウアブリッジ英語版にあるスタウアブリッジ・タウン支線英語版で使用されている。

試作車である999形での試験ののちに、139形としての初の新造車は2008年6月28日にタイズリー工場英語版の公開イベントの一環として公開され、2009年6月にはスタウアブリッジ・タウン支線で2両が営業運転を開始した。

構造[編集]

パリー・ピープル・ムーバー共通の構造としてフライホイールによるエネルギーの貯蔵が用いられており、減速時に蓄えた運動エネルギーをそのまま加速に用いることでエンジンの小型化を実現している[9]。139形にはLPGを燃料としたエンジンが搭載されており、フライホイールの起動や加速に用いられる[9]。なお、フライホイールと輪軸は静油圧式無段変速機でつながれており、電気への変換は補器類の稼働のためを除けば行われない[10][11][12]

運用[編集]

スタウアブリッジ・タウン駅に進入する999形999 900(2006年3月12日)
スタウアブリッジ・ジャンクション駅に進入する139形139 002
タイズリー工場公開イベントにて、139形139 001(2008年6月28日)

軽量気動車のスタウアブリッジ・タウン支線での使用は2006年に開始された試験運用にさかのぼる。この試験運用は2002年に製造されたPPM50(TOPS形式・番号999形999 900)を用い、1年間にわたって日曜日に行われた。この試験運用の成功により、ウェスト・ミッドランズ・フランチャイズの次期計画に軽量気動車の定期運用が組み込まれ、事業者がロンドン・ミッドランド英語版に決定するとポーターブルーク英語版からのリース契約という形で2両のPPM60が発注された。実際の運行についてはプレ・メトロ・オペレーションズが担っている。

製造された2両のPPM60は139形というTOPS形式が与えられ、それぞれ139 001、139 002と付番された。また、客貨車付番システム英語版の中では39001及び39002という番号が与えられている。これらは試験運行を行った999形と共通の機構を持つが、車体長が約1m長い。当初の計画では2008年に運行を開始することになっていたが、2009年1月には139 001はチェイスウォーター鉄道英語版にて試験を行っており、139 002は製造途中であることが明らかになった[13]

139形2両の認証には困難が伴ったが、ロンドン・ミッドランドは導入が可能であるという見方を変えなかった。2009年3月には139 001がネットワーク・レールによる旅客営業運転の認証を受けたことが発表され、ロンドン・ミッドランドは同年4月から週末、同年5月のダイヤ改正からは全日の運行を開始することを明らかにした[14]。139形の導入により、2006年から日曜日の列車に使用されていた999形と、平日の運行を担っていた153形英語版が置き換えられた。

2009年12月までに、累計20万人の乗客が139形を用いて輸送された[4]

2010年には、オープン・アクセス・オペレーターとしての列車運行参入を目指していたGOCO英語版により、999形の形式をパリー・カー12号に戻したうえでハンプシャーにある保存鉄道ミッド・ハンツ鉄道英語版での試験運行が行われた。区間はアルトン英語版英語版 - メドステッド・アンド・フォー・マークス英語版英語版英語版の1駅間、ラッシュ時のみの運行で、アルトンでサウス・ウェスト・トレインズが運行する朝はロンドン行、夕方はロンドン発の列車に接続するダイヤが組まれていた[15]。しかし、試験運行中の車両の不具合により、本格的な実施は見送られた。

その後、999 900はライトウェイト・コミュニティ・トランスポート(Lightweight Community Transport)によって購入され、改造を受けたうえで139 000と改番された[16][17][18]

将来[編集]

パリー・ピープル・ムーバーズはロンドン・ミッドランズによる139形のスタウアブリッジ・タウン支線での使用を、同様に短く孤立していて、列車本数が削減されている路線への同型車両の導入の機会ととらえている[19]

同社はPPM60の派生型のPPM220でペニストーン線英語版向けのトラムトレインの入札に参加する方針を示していた。これは3車体2台車型のもので定員は220人、最高速度は鉄道上で60 mph (97 km/h)、軌道上で50 mph (80 km/h)であった[20]。しかし、同線でのトラムトレイン運行計画は入札前の2009年に中止が確定し、代わりに貨物線を活用した電車でのトラムトレイン運行計画が策定された[21]。なお、この計画はフォスロ製の399形電車英語版を用い、2018年に開業している。

999 900から改造された139 000はデモンストレーターとしての使用が計画されており、2012年時点で初めにスタッフォードシャーのチェイスウォーター鉄道、次にレスターシャーグレート・セントラル鉄道英語版、そして最終的にはチェシャーエルスメア・ポート - ウォリントン線英語版エルスメア・ポート英語版英語版 - ヘルスビー英語版英語版間での試験が予定されていた[22]

ライトウェイト・コミュニティ・トランスポートの協力の下、パリー・ピープル・ムーバーズはより強力なエンジンを搭載して定員を増やした4軸のボギー車の開発を進めており、これを2軸の139/0形に対して139/1形と名付け、旗艦商品とする計画である。スタウアブリッジ支線での成功は他の列車運行会社の関心を集めつつあり、パリー・ピープル・ムーバーズは2012年に事前審査を通過してフランチャイズの入札に参加した列車運行会社の少なくとも1社が139形の導入を契約案に含んでいたとしている[23]

編成[編集]

形式 運行事業者 両数 製造年 編成番号 備考
139/0形 ライトウェイト・コミュニティ・トランスポート 1 2002年
2011年改造
139000 元999900
プレ・メトロ・オペレーションズ
ウェスト・ミッドランズ・トレインズ
2 2008年 139001 - 139002

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f PPM 50/ PPM 60 Specification”. Parry People Movers. 2008年10月14日閲覧。 “Dimensions: Length [..] 9.6m [..] Width 2.4m [..] Height 3.2m (high floor) Maximum speed: 65km/h on suitable trackwork [..] Passenger accommodation: Typical capacity 20-25 seated plus 30-35 standing [..] Flywheel energy storage: Effective speed range 1,000-2,600rpm [..] Self-powered vehicles: Engine Ford DSG423 2.3L LPG fuel)”
  2. ^ Clean, Green & Quiet - Lightweight Railcar Operation Scores Success and Acclaim in Passenger Service”. Parry People Movers (2006年11月30日). 2010年6月29日閲覧。 “the 12-tonne PPM 50 vehicle”
  3. ^ https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/483213/west-midlands-prospectus.pdf
  4. ^ a b “Eco-friendly tram celebrates 200,000th passenger”. Stourbridge News (Birmingham, United Kingdom). (2009年12月15日). http://www.stourbridgenews.co.uk/news/4794766.Eco_friendly_tram_celebrates_200_000th_passenger/ 2010年6月29日閲覧. "revolutionary gas powered tram ... Its official title might well be the Class 139 LPG powered light rail vehicle but to everyone local to this area it is the Parry People Mover" 
  5. ^ “()”. Today's Railways UK (74): 59. 
  6. ^ Tift, Duncan (2007年8月1日). “Green light for PPM to pioneer new rail policy”. Birmingham Post. http://www.birminghampost.net/birmingham-business/tm_headline=green-light-for-ppm-to-pioneer-new-rail-policy&method=full&objectid=19553037&siteid=50002-name_page.html 2010年6月29日閲覧. "Parry People Movers ... based in Cradley Heath, supplies lightweight rail and tram vehicles." 
  7. ^ “£700,000 oredr for two lightweight railcars”. TransportXtra. (2008年7月14日). http://www.transportxtra.com/magazines/transit/news/?ID=11669 2010年6月29日閲覧。 
  8. ^ “Class 153s temporarily return to the Stourbridge Branch as a description”. Railway Herald (170): 5. (16 March 2009). オリジナルの9 October 2011時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111009150120/http://www.railwayherald.org/magazine/pdf/RHUK/Issue170.pdf 2010年6月29日閲覧. "However, problems introducing the new lightweight railcars," 
  9. ^ a b PPM Technology”. Parry People Movers. 2017年12月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月30日閲覧。 “The rotating flywheel is a store of kinetic energy that is used to power the vehicle. ... flywheel allows the direct capture of brake energy ... A two-litre engine to transport fifty passengers. ... on board LPG-fuelled automotive engine is used.”
  10. ^ Two Axle Vehicles” (英語). Parry People Movers. 2020年5月28日閲覧。
  11. ^ Luvishis, Aleksandr. (2009). Hybrid rail vehicles. [Place of publication not identified]: [publisher not identified]. pp. 67. ISBN 978-0-578-04577-1. OCLC 698081929. https://www.worldcat.org/oclc/698081929 
  12. ^ Simpson, Barry J., 1948- (1994). Urban public transport today (1st ed ed.). London: E & FN Spon. pp. 32. ISBN 0-203-36223-3. OCLC 252870686. https://www.worldcat.org/oclc/252870686 
  13. ^ “()”. Rail Express. (2009年1月) 
  14. ^ Stourbridge railcar receives its passenger licence”. London Midland (2009年3月26日). 2015年12月3日閲覧。[リンク切れ]
  15. ^ GOCO Mid-Hants Link trial set for action - The Go! Co-op Newsletter, January 2011, p. 4
  16. ^ Lightweight Community Transport
  17. ^ A brand new railcar is being built for Mid-Hants... Archived 26 April 2012 at the Wayback Machine. - Lightweight Community Transport, 21 October 2011
  18. ^ Stourbridge Railcars continue giving good performance - PPM Newsletter, March 2012, p. 6
  19. ^ Parliamentary Light Rail Group hears case for reopenings”. Parry News. Parry People Movers. p. 3 (2008年3月). 2010年6月30日閲覧。
  20. ^ Worldwide Scope for Tram-Trains” (PDF). Parry News. Parry People Movers. p. 4 (2008年11月). 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年6月30日閲覧。
  21. ^ “City tram-trains trial unveiled”. BBC News Online. (2009年9月15日). http://news.bbc.co.uk/1/hi/england/south_yorkshire/8257652.stm 2010年6月30日閲覧。 
  22. ^ “139000 takes shape”. Lightweight Community Transport Newsletter. (2012年9月). http://www.lctltd.co.uk/Newsletter%20September%202012%20web.pdf 2012年9月28日閲覧。 
  23. ^ Parry People Movers Newsletter No 63