アメリカ沿岸警備隊総司令官

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アメリカ沿岸警備隊
総司令官
Commandant of the Coast Guard
沿岸警備隊の紋章
沿岸警備隊総司令官の旗
現職者
リンダ・L・フェイガン沿岸警備隊大将

就任日 2022年6月1日
組織国土安全保障省沿岸警備隊
指名国土安全保障長官
任命大統領
上院の承認
任期4年
継続
根拠法令合衆国法典第14編第302条 14 U.S.C. § 302
合衆国法典第14編第504条 14 U.S.C. § 504
創設1889年12月14日
初代レオナード・シェパード大佐
職務代行者アメリカ沿岸警備隊副司令官
ウェブサイトwww.uscg.mil

アメリカ沿岸警備隊総司令官 (アメリカえんがんけいびたいそうしれいかん、英語: Commandant of the Coast Guard)は、アメリカ沿岸警備隊における最高位の軍人(制服組)の地位である。総司令官は、沿岸警備隊准将以上の階級を持つ沿岸警備隊士官の中から大統領上院の承認を得て任命する。[1]
総司令官を補佐する役職として、沿岸警備隊副司令官(英語: Vice Commandant of the Coast Guard)が置かれる。また沿岸警備隊副司令官の下に2人の管区司令官(太平洋管区及び大西洋管区)及び2人の沿岸警備隊総司令官代理(作戦担当及び任務支援担当)が置かれている。なお、2003年に国土安全保障省が置かれる前は、沿岸警備隊は運輸省(運輸長官)の下に(1966年から2003年)、更に以前は財務省(財務長官)の下に(1790年から1966年)置かれていた。

歴史[編集]

沿岸警備隊総司令官の役職は、沿岸警備隊の兵科士官と技術士官の階級を定めた1923年の法律に最初に登場した。1923年以前は、沿岸警備隊の指揮官としてCaptain-commandant(総司令官たる大佐)という階級が置かれていた。このCaptain-commandant(総司令官たる大佐)の階級は1908年に税関監視艇部 (United States Revenue Cutter Service) に置かれたものであり、税関監視艇部長がその階級にあった。なお、初代の沿岸警備隊総司令官であるレオナード・シェパード大佐は、沿岸警備隊の前身である税関監視艇局長(Chiefs of the Revenue Marine Bureau)の役職にあった当時からCaptain-commandant(総司令官たる大佐)の階級を受けたことはない。沿岸警備隊総司令官として最初にCaptain-commandant(総司令官たる大佐)の階級を与えられたのは1905年に3代目として就任したワース・ロス大佐であり、1908年に与えられた。なおこの時、ロス大佐の前任者であり、既に退役していたチャールズ・シューメーカー大佐にもCaptain-commandant(総司令官たる大佐)の階級が与えられた。初代のレオナード・シェパード大佐は、1908年当時、既に死亡していたためCaptain-commandant(総司令官たる大佐)の階級が贈られることはなかった。

統合参謀本部における地位[編集]

アメリカ沿岸警備隊は、アメリカ軍の6個の軍種の一つとされるが、他軍種の参謀総長等(アメリカ陸軍参謀総長アメリカ海兵隊総司令官アメリカ海軍作戦部長アメリカ空軍参謀総長アメリカ宇宙軍作戦部長)と異なり、統合参謀本部のメンバーではない。しかしながら総司令官は法令により、他の統合参謀本部メンバーと同じ給与を受け取り、大統領演説中などは上院規則などにおいて連邦議会内では事実上統合参謀本部メンバーとして扱われる。また他軍種の参謀総長等と異なり、総司令官は沿岸警備隊の作戦と運用の両面にかかる権限を保持している。従って、ゴールドウォーター=ニコルズ法により陸軍海兵隊海軍空軍宇宙軍の作戦に関する指揮系統は、大統領から国防長官を経て各統合軍司令官に伝達されるが、沿岸警備隊の場合は、大統領から国土安全保障長官(戦時において海軍省に編入されている場合は、海軍長官)を経て直接総司令官に伝達される。

税関監視艇局長[編集]

税関監視艇局長(Chiefs of the Revenue Marine Bureau)は、それまで各地の税関長の指揮下にあった監視艇部隊の指揮系統を一括的に管理した。

  • アレクサンダー・フレイザー(Alexander V. Fraser)大佐(税関監視艇局)、1843年-1848年
  • リチャード・エヴァンス(Richard Evans)大佐(税関監視艇局)、1848年-1849年

1849年に税関監視艇局が解散になると、1869年に再度設置されるまでの間、税関監視艇部隊は再び税関長の指揮下に戻った。

  • ブロートン・デヴェリュー(N. Broughton Devereux)、1869年–1871年
  • サムナー・キンボール(Sumner I. Kimball)、1871年–1878年
  • エズラ・クラーク(Ezra Clark)、1878年–1885年
  • ピーター・ボネット(Peter Bonnett)、1885年–1889年

歴代総司令官[編集]

沿岸警備隊総司令官は、税関監視艇局(Revenue Marine Bureau)が沿岸警備隊に改組された時から現職のリンダ・L・フェイガン沿岸警備隊大将まで27人が任命されている。

写真 指名 階級 就任日 退任日
1 レオナード・シェパード
(Leonard G. Shepard)
大佐(Captain) 1889年12月14日 1895年3月14日
2 チャールズ・シューメーカー
(Charles F. Shoemaker)
1895年3月19日 1905年3月27日
3 ワース・ロス
(Worth G. Ross)
総司令官たる大佐(Captain-commandant) 1905年4月25日 1911年4月30日
4 エルスワース・ベルトルフ
(Ellsworth P. Bertholf)
代将(Commodore) 1911年6月19日 1919年6月30日
5 ウィリアム・レイノルズ
(William E. Reynolds)
少将(Rear admiral) 1919年10月2日 1924年1月11日
6 フレデリック・ビラード
(Frederick C. Billard)
1924年1月11日 1932年5月17日
7 ハリー・ハムレット
(Harry G. Hamlet)
1932年6月14日 1936年6月14日
8 ラッセル・ウェーシェ
(Russell R. Waesche)
大将(Admiral) 1936年6月14日 1946年1月1日
9 ジョセフ・ファーリー
(Joseph F. Farley)
1946年1月1日 1950年1月1日
10 マーリン・オニール
(Merlin O'Neill)
中将(Vice admiral) 1950年1月1日 1954年6月1日
11 アルフレッド・リッチモンド
(Alfred C. Richmond)
大将(Admiral) 1954年6月1日 1962年6月1日
12 エドウィン・ローランド
(Edwin J. Roland)
1962年6月1日 1966年6月1日
13 ウィラード・スミス
(Willard J. Smith)
1966年6月1日 1970年6月1日
14 チェスター・ベンター
(Chester R. Bender)
1970年6月1日 1974年6月1日
15 オーウェン・サイラー
(Owen W. Siler)
1974年6月1日 1978年6月1日
16 ジョン・ヘイズ
(John B. Hayes)
1978年6月1日 1982年5月28日
17 ジェームズ・グレイシー
(James S. Gracey)
1982年5月28日 1986年5月30日
18 ポール・ヨスト・ジュニア
(Paul A. Yost Jr.)
1986年5月30日 1990年5月31日
19 ウィリアム・キメ
(J. William Kime)
1990年5月31日 1994年6月1日
20 ロバート・クラメック
(Robert E. Kramek)
1994年6月1日 1998年5月30日
21 ジェームズ・ロイ
(James Loy)
1998年5月30日 2002年5月30日
22 トーマス・コリンズ
(Thomas H. Collins)
2002年5月30日 2006年5月25日
23 サド・アレン
(Thad W. Allen)
2006年5月25日 2010年5月25日
24 ロバート・パップ・ジュニア
(Robert J. Papp Jr.)
2010年5月25日 2014年5月30日
25 ポール・フューチャー
(Paul F. Zukunft)
2014年5月30日 2018年6月1日
26 カール・シュルツ
(Karl L. Schultz)
2018年6月1日 2022年6月1日
27 リンダ・L・フェイガン
(Linda L. Fagan)
2022年6月1日 現職

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ 14 U.S. Code § 302 - Commandant; appointment” (英語). LII / Legal Information Institute. 2023年1月17日閲覧。

関連項目[編集]