きつねのはなし

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きつねのはなし』は、日本小説家森見登美彦による短編小説集。森見自身はこの作品を「三男」と呼んでいる。

概要[編集]

本作は、全4話からなる奇譚集の形式をとっている。そのためそれぞれの話にはストーリー上のつながりはないが、「果実の中の龍」において先輩の口から他の3話の内容を思わせる話が出てくる他、「きつねのはなし」にて天城さんが知人からケモノをもらっている、「水神」で「きつねのはなし」に出てきた芳蓮堂が再登場するなど緩やかなつながりはあるようである。また本作以前に書かれた『太陽の塔』や『四畳半神話大系』および『夜は短し歩けよ乙女[1]で見られるような独特の古めかしい言い回しは使われていない。

各話紹介[編集]

きつねのはなし
一乗寺にある古道具店芳蓮堂でアルバイトをしている私は、店主のナツメさんに頼まれて鷺森神社近辺に住む天城さんの元へ風呂敷包みを届けるよう頼まれた。そこから私は奇妙な事件に巻き込まれていくことになる。
果実の中の龍
一回生のころ、私は一乗寺の先輩の下宿へ頻繁に通っていた。博識かつ経験豊富で話題に欠くことがなく私を楽しませてくれた先輩の秘密とは…。
私はアルバイトとして、高校生の西田修二の家庭教師をすることになった。やがて兄の直也、幼馴染の夏尾美佳、秋月とも面識を持つことになる。宵山の近づいた7月、西田家の親父さんから夜毎に人を襲う通り魔の話を聞かされる。それは私が目撃したケモノの仕業によるものであった。
水神
祖父の通夜の夜、酒宴の席に祖父の馴染みの小道具店であった芳蓮堂から、祖父が預けた家宝が届くという。しかし芳蓮堂の女店主が持ってきたそれは、一壜の水であった。

書誌情報[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 単行本化は本作より後の11月だが、2月には第1章が『Sweet Blue Age』に掲載された。