あなたがいてこそ

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あなたがいてこそ
Maryada Ramanna
ラミニドゥ邸の撮影セットでのラージャマウリ、ナジニードゥと主要スタッフ
監督 S・S・ラージャマウリ
脚本 S・S・ラージャマウリ
原案 S・S・カンチ
原作荒武者キートン英語版
製作 ショーブ・ヤーララガッダ
プラサード・デーヴィネーニ
出演者 スニール
サローニ・アスワーニー
ナジニードゥ英語版
スプリート
音楽 M・M・キーラヴァーニ
撮影 ラーム・プラサード英語版
編集 コータギリ・ヴェンカテーシュワラ・ラーウ英語版
製作会社 アルカ・メディアワークス
配給 インドの旗 アルカ・メディアワークス
日本の旗 太秦
公開 インドの旗 2010年7月23日
日本の旗 2014年7月26日
上映時間 125分
製作国 インドの旗 インド
言語 テルグ語
製作費 ₹120,000,000 - 140,000,000[1][2]
興行収入 ₹400,000,000[3]
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あなたがいてこそ』(原題:Maryada Ramanna)は、2010年インドテルグ語アクションコメディ映画S・S・ラージャマウリが監督を務め、スニールサローニ・アスワーニーが主演を務めた[4]。1923年公開の『荒武者キートン英語版』を原作としている[5]。スニールにとっては2作目の主演作となる[6]

映画の好評を受け、タミル語映画(『Vallavanukku Pullum Aayudham』)、マラヤーラム語映画(『Ivan Maryadaraman』)、ベンガル語映画(『Faande Poriya Boga Kaande Re』)、カンナダ語映画(『Maryade Ramanna』)、ヒンディー語映画(『ターバン魂英語版』)でリメイクされている。

ストーリー[編集]

アーンドラ・プラデーシュ州ラヤラシーマ英語版の2つの家は抗争の末に当主同士が一騎打ちをして互いに命を落とし、兄を殺されたラミニドゥは仇のラガワ・ラオの一族への復讐を誓う。一方、ラガワ・ラオの息子ラームは母に連れられ村を去りハイデラバードに移り住み、抗争のことを知らずに成長する。

28年後、ラームは配達業の仕事に就いていたが、愛車のオンボロ自転車が原因で仕事をクビになってしまう。そこに故郷から手紙が届き、父の遺した広大な土地を相続したことを知る。ラームは土地を売却することに決め故郷に戻るが、乗り込んだ列車で画家を目指す女性アパルナに出会い、互いに好意を抱くようになる。村に到着したラームは有力者のラミニドゥの屋敷を訪れて土地売却の協力を依頼し、ラミニドゥは彼を歓迎する。屋敷でラームはアパルナと再会し、彼女がラミニドゥの娘であることを知る。一方、ラームの素性を知ったラミニドゥ家の人々は彼を殺そうとするが、ラミニドゥは屋敷内での殺害を禁じ、彼を屋敷の外に追い出してから殺すように指示する。

ラミニドゥ家が父の抗争相手だと知ったラームは、殺されるのを防ぐため様々な理由を付けて屋敷に留まり続けるが、限界に達したため屋敷を脱出する。アパルナの助けを借りて逃げ出すことに成功するが、途中でラミニドゥ家の人々に追い付かれてしまう。アパルナはラームを助けようと父を説得し、ラームもラミニドゥ家の人々に立ち向かうが、彼らは聞く耳を持たずラームを殺そうとする。アパルナは橋の上から飛び降り、ラームは驚くラミニドゥ家の人々を尻目に、彼女を助けるため橋から飛び降り彼女を救う。ラミニドゥは危険を顧みずに娘を助けようとしたことでラームへの復讐を止め、ラームはアパルナと結ばれる。

キャスト[編集]

製作[編集]

企画[編集]

『あなたがいてこそ』は1923年のバスター・キートンのサイレント映画『荒武者キートン』からインスピレーションを得ています。映画を真似したとも言えるでしょうね、特に気にしませんけど。オリジナルを鑑賞した際、この物語をとても気に入ったので、私なりのやり方で撮りたいと思ったのです。オリジナルに関わった製作者を捜してみたのですが、もう誰もいなかったのです。オリジナルの脚本家は、1930年代にすでに亡くなっていました。75年以上前から存在する素材なら、著作権を気にせず利用できます。ただし、ヒンディー語映画を製作する場合、過去のパンジャーブ語映画英語版オリヤー語映画英語版テルグ語映画の素材を利用する際は許可を得る必要がありますけどね。
製作のきっかけについて語るS・S・ラージャマウリ[7]

S・S・ラージャマウリは、1923年の『荒武者キートン英語版』を自分のやり方で作り直したいと考えていた。彼は同作が公開から75年経過したことで著作権が失効していることに気付き[7]、従兄弟のS・S・カンチと共同で脚本を執筆し、ラヤラシーマ英語版を舞台に現地の派閥間の暴力ともてなしにフォーカスを当てた物語を描いた[8][9][5]

2009年6月にラーマナイドゥ・スタジオ英語版で製作発表が行われた[10]。ラージャマウリは製作について「私は『マガディーラ 勇者転生』の撮影中に『あなたがいてこそ』の製作を決めました。それは、『マガディーラ 勇者転生』が1年半という期間をかけて作られ、肉体的・精神的な緊張を強いられたプロジェクトだったからです。私は『マガディーラ 勇者転生』の直後に、再び肉体的疲労に陥るような映画は作りたくありませんでした。『あなたがいてこそ』は、別の大きなプロジェクトを考え出すためのバッテリーを充電する時間を与えてくれました」と語っており、『マガディーラ 勇者転生』の興行的成功により高まった観客からの期待を最小限に抑えるため、公開前に映画のプロットを明かしている[11]

音楽[編集]

あなたがいてこそ/
サウンドトラック
M・M・キーラヴァーニサウンドトラック
リリース
録音 2010年
ジャンル サウンドトラック
時間
レーベル ヴェル・レコード
プロデュース M・M・キーラヴァーニ
M・M・キーラヴァーニ アルバム 年表
Jhummandi Naadam
(2010年)
『あなたがいてこそ』
(2010年)
Anaganaga O Dheerudu
(2010年)
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ハイデラバードシルパカーラ・ヴェディカー英語版でオーディオリリース・イベントが開催された。イベントはインターネット中継され、世界中の視聴者から好評を得た[12]。また、イベントにはN・T・ラーマ・ラオ・ジュニアラヴィ・テージャ英語版プラカーシュ・ラージV・V・ヴィナヤク英語版ディル・ラージュ英語版プラバースが招待されている[12]

トラックリスト
#タイトル作詞作曲・編曲歌手時間
1.「Ammayi Kitiki Pakkana」アナンタ・シュリラーム英語版 N・C・カルニヤ英語版、チャイトラ
2.「Udyogam Oodipoyind」ラーマジョーガイヤー・サストリー英語版 ランジート英語版
3.「Telugammayi」アナンタ・シュリラーム M・M・キーラヴァーニ、ギータ・マドゥリ英語版
4.「Raaye Raaye」チャイタニヤ・プラサード ラグー・クンチェ英語版、ギータ・マドゥリ
5.「Parugulu Thiyy」シリヴェンネラ・シータラーマ・サストリー英語版 S・P・バーラスブラマニアム
合計時間:

評価[編集]

興行収入[編集]

アメリカ合衆国では公開初週に13万ドルの興行収入を記録した[13]。インドでは公開7日間で1億580万ルピー(劇場所有者の利益と娯楽税を差し引いた金額)の興行収入を記録しており、最終的な興行収入は4億ルピーを超え、配給収入は2億9000万ルピーとなり、2010年のテルグ語映画年間興行収入上位作品の一つとなった[2][14][15][3]

批評[編集]

『あなたがいてこそ』は批評家から高い評価を得ている[16][17]CNN-IBN英語版の批評家ラグー・チャイタニアは、「クライマックスは恐らく映画全体における唯一の欠点であり、監督は感情と愛の陳腐な道に進んでしまった。スニールは金を手に入れるために故郷に戻った潔白な男を見事に演じきった。サローニはスニールに惚れる女性を演じたが、これは彼女にとって非常に素晴らしい役だった。敵役一家の家長を演じたナジニードゥはとても印象的であり、アパルナの従兄弟を演じたブラフマージも良い演技をしている。S・S・ラージャマウリは莫大な予算と大スターがいなくても良い映画を作れることを示した勝者だ」と批評している[18]ザ・タイムズ・オブ・インディアは2.5/5の星を与え、「『Andala Ramudu』で一躍ヒーローになったコメディアンのスニールが数年ぶりに舞い戻り、捻りのあるコメディを抑制の効いた演技で披露してくれる。だが、綿密に作られた撮影セット、素晴らしいカメラワーク、M・M・キーラヴァーニの甘美な曲は、このコミック・ケイパー映画を別の次元へと連れて行った」と批評している[19]

Sifyは、「もはや、スニールはコメディヒーローには見えないだろう。彼のダンスは実に素晴らしく、サローニは美しくて自然な性的魅力を備えている。サローニの才能が3年間も発掘されなかったことは不運だが、ラージャマウリにとっては良いタイミングだった。彼女は最初から最後まで完璧に役を演じてみせた。きっと、彼女には明るい未来が待っているはずだ。『あなたがいてこそ』は楽しさとスリル、そしてサスペンスが見事にミックスされた作品だ」と批評している[20]Rediff.comは3/5の星を与え、「ラージャマウリは勝利を手に入れた。スニールは観客を魅了し、サローニは可愛らしく映り、しかも説得力がある。ナジニードゥは見事に役を演じきり、同じようにブラフマージやアヌージ・グルワラ、ラオ・ラメシュなど巧みな演技を見せる俳優が何人も出演している」と批評している[21]

受賞[編集]

映画賞 部門 対象 結果 出典
ナンディ賞 大衆長編映画賞 ショーブ・ヤーララガッダ、プラサード・デーヴィネーニ 受賞 [22]
悪役賞英語版 ナジニードゥ
男性プレイバックシンガー賞 M・M・キーラヴァーニ「Teluguammayi」
審査員特別賞英語版 スニール

リメイク一覧[編集]

作品名 言語 出典
2011 Maryade Ramanna カンナダ語 [23]
2011 Faande Poriya Boga Kaande Re ベンガル語
2012 ターバン魂英語版 ヒンディー語
2014 Vallavanukku Pullum Aayudham タミル語
2015 Ivan Maryadaraman マラヤーラム語

出典[編集]

  1. ^ భళి భళి భళిరా భళి రాజమౌళి” (テルグ語). Sakshi (2017年5月5日). 2017年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月31日閲覧。
  2. ^ a b Bahubali Director SS Rajamouli Completes 20 Years in Industry: A Look At His Journey” (英語). News18 (2021年9月28日). 2022年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月7日閲覧。
  3. ^ a b Tollywood: The big hits of 2010”. The New Indian Express. 2020年9月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月7日閲覧。
  4. ^ Saloni, Sunil in Maryada Ramanna”. Sify. 2018年6月4日閲覧。
  5. ^ a b అన్నమయ్య లాంటి చిత్రం చేస్తా!” (テルグ語). Eenadu (2010年8月). 2022年8月28日閲覧。
  6. ^ Maryada Ramanna film launch”. idlebrain. 2009年6月5日閲覧。
  7. ^ a b 'Makkhi' director all set to break into Bollywood”. The Times of India. 2022年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。
  8. ^ Maryada Ramanna press meet - Telugu cinema”. Idlebrain.com (2010年6月26日). 2022年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。 “SS Rajamouli said, “Rayalaseema is known for factionism and violence. But is also known for hospitality. Maryada Ramanna is about a man who is torn with his two extremities of factionism and hospitality."”
  9. ^ 'Makkhi' director all set to break into Bollywood” (英語). The Times of India. 2022年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年8月23日閲覧。 “In one area of Andhra Pradesh family feuds that persist for many generations is a reality. That’s what I showed in Maryada Ramanna. I saw families that were perfectly cultured and courteous, killing each other. I don’t think this peculiar contradictory culture of the co-existence of violence and hospitality exists in Punjab.”
  10. ^ Maryada Ramanna film launch”. idlebrain. 2009年6月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月5日閲覧。
  11. ^ Interview with SS Rajamouli”. Idlebrain.com (2010年7月20日). 2014年11月14日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年11月14日閲覧。
  12. ^ a b Maryada Ramanna music launched in style”. Oneindia Entertainment (2010年7月5日). 2020年9月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年7月5日閲覧。
  13. ^ Maryada Ramanna collects 1 crore rupees share in 1st weekend in USA”. 2018年6月4日閲覧。
  14. ^ భళి భళి భళిరా భళి రాజమౌళి” (テルグ語). Sakshi (2017年5月5日). 2017年8月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年6月7日閲覧。
  15. ^ Top Ten Telugu Films of the year 2010”. Sify. 2022年6月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月25日閲覧。 “Top director Rajamouli's Maryada Ramanna starring Sunil and Saloni collected about Rs 30 Crores.”
  16. ^ “I am basking in the success of Maryada Ramanna, says director”. Chennai, India: The Hindu. (2010年7月29日). http://www.thehindu.com/news/cities/Vijayawada/article539961.ece 2010年7月29日閲覧。 
  17. ^ Tollywood loves Maryada Ramanna”. Sify. 2010年7月29日閲覧。
  18. ^ 'Maryada Ramanna' emerges a winner”. IbnLive. 2010年7月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年7月28日閲覧。
  19. ^ “Movie Review-Maryada Ramanna”. The Times of India. オリジナルの2012年11月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20121106060736/http://timesofindia.indiatimes.com/entertainment/regional/telugu/movie-reviews/Maryada-Ramanna/movie-review/6210914.cms 2010年7月24日閲覧。 
  20. ^ Maryada Ramanna”. Sify. 2014年7月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月8日閲覧。
  21. ^ Maryada Ramanna is fun”. Rediff. 2010年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月8日閲覧。
  22. ^ “Creativity to the fore in low budget films”. The Times of India. (2011年8月6日). オリジナルの2012年9月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120924124716/http://articles.timesofindia.indiatimes.com/2011-08-06/hyderabad/29858062_1_feature-film-film-on-national-integration-music-director-award 2011年8月6日閲覧。 
  23. ^ Maryade Ramanna Movie Review {3.5/5}, The Times of India, https://timesofindia.indiatimes.com/entertainment/kannada/movie-reviews/maryade-ramanna/movie-review/12197664.cms 2022年8月23日閲覧。 

外部リンク[編集]