ロマン・トマ

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ロマン・トマ
ロマン・トマ
プロフィール
生年月日 (1977-08-01) 1977年8月1日(46歳)
出身地 日本の旗 日本東京都
国籍 日本
フランス
職業 CGアニメーター
アニメ監督
プロデューサー
所属 ドメリカ(代表取締役社長)
活動期間 1997年 -
ジャンル アニメーション
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ロマン・トマ[1] (Thomas Romain 1977年8月1日[2] - ) は、フランス出身・日本在住のデザイナー、イラストレーター、アートディレクター、演出家。おもにゲームやアニメの美術設定やメカニックデザインを手がける。Studio No Border株式会社の経営者[3]

経歴[編集]

フランス東部のブザンソンで生まれ、パリで育つ[2]。大学で物理学を専攻したが、中退後エンタテインメント関連の仕事に就こうと画の勉強を始める。19歳の頃、『オーバン・スターレーサーズ』の原作者であるサヴァン・イェットマン=エッフェル (Savin Yeatman-Eiffel) と知り合い、Sav! The World Productions[4]でアニメ化プロジェクトに関わる。また、パリの映像専門学校ゴブラン (Gobelins l'Ecole de l'Image) でアニメーション制作技法を学ぶ。学校の仲間と制作した短編アニメがテレビアニメシリーズ"Code Lyoko"へ発展する(日本では『CODEリョーコ』として放送)。

2004年、『オーバン・スターレーサーズ』をハルフィルムメーカー(現TYOフィルムメーカー)と日仏合作するため来日する。2年半の滞在中に日本のアニメ業界に馴染んだことや、日本人女性と結婚したこともあり、完成後もフリーデザイナーとして日本で働く。

2008年、自身のオリジナル企画『バスカッシュ!』がサテライトで採用され、アニメ化を機に同社所属となる。本作ではブリュネ・スタニスラスルガル・ヤンらとフランス人美術チームを組み、以後も『アクエリオンEVOL』『戦姫絶唱シンフォギア』『AKB0048』などのサテライト作品のデザインワークを手がける。また、『超速変形ジャイロゼッター』(スクウェア・エニックス)や『スペース☆ダンディ』(ボンズ)など、他社企画のメカニックデザインにも参加している。

2018年5月、サテライトから独立し、フランスのメディア企業アンカマ (Ankamaから出資を受け、Studio No Borderを設立[3]。企画・デザインを中心に、日本製アニメに関心をもつ海外企業との橋渡し役を目指す。また、フランス人クリエイターの日本のアニメ業界への就業を支援する"Furansujin Connection"(フランス人コネクション)というコミュニティを立ち上げている[5]

2020年、俳優の香川照之がプロデュースする昆虫絵本シリーズ『INSECT LAND』のキャラクターデザイン・イラストを担当する[6]

親子デザイン工房[編集]

2017年、息子の樹(8歳)と竜之介(10歳)がスケッチブックに描いたイラストの自由な発想に刺激を受け、デザイナーの父親としてこれらの「原案」を再解釈し、プロレベルの水彩イラストに仕上げてみた[7]。その対比画をツイッター上で公開したところ、海外の国々から取材依頼が来るほど話題になった[8]

その後もSNSアカウントやYouTubeチャンネルで「親子デザイン工房」を展開し、2018年には親子3人の連名による画集がフランス[9]と日本[10]で発売された(2019年にはアメリカでも出版予定)。これらのプロジェクトは、普段は接点のない人々からフォローしてもらう機会になり、自身の独立・スタジオ立ち上げのきっかけにもなったという[11]

人物・エピソード[編集]

  • 1980年代〜1990年代には日本のサブカルチャーがフランスに輸入され始めていて、当時は"Goldorak"(『UFOロボ グレンダイザー』)などのアニメを楽しんだり、『ファイナルファンタジー』などのゲームにはまっていたという。ただ、当時はそれらが日本製だとは知らなかった。
  • 影響を受けた日本アニメは『AKIRA』やスタジオ・ジブリ作品、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、『カウボーイビバップ』など、実写に近い空間表現を演出した作品[12]。メカデザインでは鳥山明[13]、美術設定では木村真二森本晃司らに影響や刺激を受けていると語っている[14]
  • 日本で日本人のスタッフと作品を作るのが夢だったといい、『オーバーン・スターレーサーズ』制作のため来日する以前より日本語の勉強をしていた[15]。柔軟に他人の話を聞くことができるので「フランス人らしくない」とよく言われるが、その性格のおかげで日本社会に馴染みやすかった[3]
  • クリエイターとしては「空間を大事にして絵をつくっていくタイプ」であり、「奥行き感がいちばん大事なので、パースのルールを守りながらそこに気をつけています」と述べている[16]。2015年にはツイッター上で行ったパースについての作画技法解説がわかりやすいと話題になった[17]

参加作品[編集]

テレビアニメ[編集]

webアニメ[編集]

アニメ映画[編集]

OVA[編集]

ゲーム[編集]

その他の仕事[編集]

画集[編集]

LOST IN ANIME ロマン・トマ DESIGN WORKS
2015年7月31日、メディアパル発行、ISBN 9784896109498
Traits de Famille - Le Bestiaire fantastique d'un pere et de ses fils
2018年3月8日、Kurokawa発行、Itsuki,Ryunosuke & Thomas Romain 名義
親子デザイン工房
2018年9月25日、玄光社発行、ロマン・トマ&竜之介、樹 名義、ISBN 9784768311134

脚注[編集]

  1. ^ 本来は「トマ・ロマン」であるが、日本語風に姓を前にする「ロマン・トマ」名義で活動している。
  2. ^ a b 『アニメージュ』2015年10月号、125頁。
  3. ^ a b c フランス人らしくない 自分だからこそできる、日本のクリエイティブシーンと世界をつなぐ。(ロマン・トマ)”. シリーズ企画「20人に聞く」<4>. CGWORLD.jp. p. 2/2 (2018年11月12日). 2018年11月18日閲覧。
  4. ^ "Sav! The World Productions公式サイト"(日本語)
  5. ^ FURANSUJIN CONNECTION とは?” (仏語(日本語訳)). Furansujin Connection (2016年7月). 2018年11月18日閲覧。
  6. ^ 香川照之プロデュース 自然教育絵本 INSECT LAND(インセクトランド)”. 公式サイト (2020年). 2020年5月21日閲覧。
  7. ^ 五月アメボシ (2017年1月25日). “息子の自由な発想のスケッチをクリエイターのパパが見事にイラスト化 "親子デザイン工房"がステキすぎる!”. ねとらぼ. https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1701/24/news136.html 2017年2月2日閲覧。 
  8. ^ ThomasRomain ロマン・トマ [@Thomasintokyo] (2017年1月27日). "「親子デザイン工房」プロジェクトは思っていた以上に話題になりました。". X(旧Twitter)より。 {{cite web}}: Cite webテンプレートでは|access-date=引数が必須です。 (説明)
  9. ^ Traits de Famille - Le Bestiaire fantastique d'un père et de ses fils”. Kurokawa (2018年3月8日). 2018年5月2日閲覧。
  10. ^ 親子デザイン工房 ロマン・トマ&竜之介、樹”. 玄光社 (2018年). 2018年9月20日閲覧。
  11. ^ ロマン・トマさんインタビュー:「親子デザイン工房」で伝えたいのは「面白いアイディアを生み出すことは誰にだってできる」こと”. PICTURES. 玄光社 (2019年2月22日). 2019年2月22日閲覧。
  12. ^ フランス人らしくない 自分だからこそできる、日本のクリエイティブシーンと世界をつなぐ。(ロマン・トマ)”. シリーズ企画「20人に聞く」<4>. CGWORLD.jp. p. 1/2 (2018年11月12日). 2018年11月18日閲覧。
  13. ^ 『グレートメカニックDX.28』、93頁。
  14. ^ 『アニメージュ』2015年10月号、127頁。
  15. ^ 『アニメージュ』2015年10月号、124頁。
  16. ^ "クリエイターズ・セレクション vol.24 ロマン・トマ インタビュー (2/3)". バンダイチャンネル.(2015年8月28日)2015年12月25日閲覧。
  17. ^ "『スペース☆ダンディー』のロマン・トマ氏による「パースの描き方」がとてもシンプルで分かりやすいと好評!". panseponse7. Togetter.(2015年)2015年12月25日閲覧。
  18. ^ 「マクロスΔ」のサテライトが海外クリエイターと組み送り出す「キャノン・バスターズ」がNetflixで配信決定”. (2017年8月3日). 2018年9月20日閲覧。
  19. ^ "マシン紹介|超速変形ジャイロゼッター". (スクウェア・エニックス)

参考文献[編集]

外部リンク[編集]