ヤマドリタケモドキ

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ヤマドリタケモドキ
分類
: 菌界
: 担子菌門
: 真正担子菌綱
: イグチ目
: イグチ科
: ヤマドリタケ属
: ヤマドリタケモドキ
学名
Boletus reticulatusSchaeff.
和名
ヤマドリタケモドキ
英名
summer cep

ヤマドリタケモドキ(学名:Boletus reticulatus)はイグチ目イグチ科ヤマドリタケ属の菌類。外国ではBoletus aestivalisとしてよく知られ、英語圏ではsummer cepとしても知られる。ヨーロッパの落葉性樹林に生えることが多く、オークと共生的な関係を持っている。に子実体を作り、食用になるため人気がありキノコ狩りで集められる。

分類[編集]

最初にこの種が記されたのはヤーコブ・クリスティアン・シェーファーによってであり、1774年のことである。これは1793年に記したBoletus aestivalisとして記したジャン=ジャック・ポーレットに先立っており、学名の優先権を得て、Boletus reticulatusが学名になっている。しかし、外国ではBoletus aestivalisとして知られていることのほうが多い。

分布・生息地[編集]

ヤマドリタケモドキは、ヨーロッパ日本などの北半球の広い範囲に分布しており、夏の初めから秋の終わりまでにブナなどの広葉樹林や、マツなどの針葉樹との混生林の地上に発生する。温かく湿度の高い場所を好む。特にフランス南西部で一般的である。中国に分布するB. bainiugan (白牛肝菌)はヤマドリタケモドキ (B. reticulatus)にごく近い種で、イタリアのポルチーニの一種であるB. aereusの近縁種とされている[1]

特徴[編集]

ヤマドリタケモドキの子実体は膨らんだ球根状のと大きい饅頭型の傘が特徴的である。

傘は丸く、直径は20cm近くになる。茶色をしており、乾燥している際には赤褐色の外皮になっている。時にひび割れると中に白い面が見える。また、外観にはアミのような模様が現れる。

可食のイグチに見られるように傘の端の白い部分があいまいであるか全体的に欠乏していることよりも、より暗く、より均一な影を持ち、滑らかな傘の感じはこの種を見つけるのに鍵となる重要な特徴である。傘の裏の 管孔と胞子の子実層は最初は白く、時間を得るごとに白から黄色に変わっていき最終的に茶色い色になる。

柄は中央についており高さは15cm程に育つこともある。また強く網状の模様が現れる。柄も白から茶色に変化していく。

肉は白く細く、硬く締まった身をしており、山吹色のような色をしている事もある。ほかのイグチ科のキノコ同様、虫の幼虫に喰われることも多い。また、香りが良い。

食用のヤマドリタケススケヤマドリタケ英語版ムラサキヤマドリタケ英語版、通常不食のニガイグチ、毒のウツロイイグチ英語版、強毒のドクヤマドリと外見が似ている。ドクヤマドリの柄には網状の模様がない事から区別することができる。ウツロイイグチは成菌の場合は柄がヤマドリタケモドキと比べると細く、根元が膨らんでいない。また、管孔を傷つけると色が濃くなる。

ゲノム解析により、ヤマドリタケモドキはヤマドリタケとススケヤマドリタケとの姉妹菌であり、これら3種の祖先はen:Boletus mamorensisであることが分かった。

食用[編集]

ヤマドリタケモドキは多くのイグチ類同様に料理に好まれて使われている。味にはくせがないが、肉はヤマドリタケよりも柔らかい。イタリアのポルチーニ茸採集家のアンケートの結果では1位はBoletus aereus、2位はBoletus aestivalis(ヤマドリタケモドキ)、3位はBoletus edulis(ヤマドリタケ)という情報もある。

脚注[編集]

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • (フランス語) Régis Courtecuisse, Bernard Duhem : Guide des champignons de France et d'Europe (Delachaux & Niestlé, 1994-2000).
  • (フランス語) Marcel Bon : Champignons de France et d'Europe occidentale (Flammarion, 2004)
  • (フランス語) Dr Ewaldt Gerhardt : Guide Vigot des champignons (Vigot, 1999) - ISBN 2-7114-1413-2
  • (フランス語) Roger Phillips : Les champignons (Solar, 1981) - ISBN 2-263-00640-0
  • (フランス語) Thomas Laessoe, Anna Del Conte : L'Encylopédie des champignons (Bordas, 1996) - ISBN 2-04-027177-5
  • (フランス語) Peter Jordan, Steven Wheeler : Larousse saveurs - Les champignons (Larousse, 1996) - ISBN 2-03-516003-0
  • (フランス語) G. Becker, Dr L. Giacomoni, J Nicot, S. Pautot, G. Redeuihl, G. Branchu, D. Hartog, A. Herubel, H. Marxmuller, U. Millot et C. Schaeffner : Le guide des champignons (Reader's Digest, 1982) - ISBN 2-7098-0031-4
  • (フランス語) Henri Romagnesi : Petit atlas des champignons (Bordas, 1970)