フラットコーテッド・レトリーバー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フラットコーテッド・レトリーバー
ブラックの毛色をしたフラットコーテッド・レトリーバー
愛称 Flattie
原産地 イギリスの旗 イギリス
特徴
体重 オス 27–36 kg (60–79 lb)
メス 25–32 kg (55–71 lb)
体高 オス 59–61 cm (23–24 in)
メス 56–59 cm (22–23 in)
外被 つややかでなめらか
毛色 ブラック、レバー
出産数 4 - 8 子
寿命 8 - 10 年
イヌ (Canis lupus familiaris)

フラットコーテッド・レトリーバー: Flat-coated Retriever)は、イングランド原産のレトリーバー犬種である。

歴史[編集]

19世紀半ばに、カナダからイギリス輸入されたセント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ(小型のニューファンドランド)等と、イギリスのセター犬種を掛け合わせて作られた[1][2]1859年に初めてドッグショーに登場した[3]。当初は、セッターから受け継いだ波打つ被毛を持っており、ウェービーコーテッド・レトリーバー(英:Wavy-coated Retriever)と呼ばれた[1][2][4]。そもそも当時はレトリーバーをカーリー、ウェービー、スムースの3種に分類していた[2]

ウェービーコーテッド・レトリーバーは、当時人気のあったカーリーコーテッド・レトリーバーよりもさらに大人しく、咥えた獲物に歯形がつかないようにするための技術(ソフト・マウス)をより高度に習得できるところから、高い人気を得た[1]。その後、1900年頃にかけて、より平滑で体に沿う被毛や、より身軽さをもとめて品種改良が進められ、フラット・コーテッドと呼ばれるようになった[1][2][3]。その過程では、スコッチ・コリーやセターとの交配が行われた[2]

第一次世界大戦頃まで人気があったが、ラブラドール・レトリーバーゴールデン・レトリーバーの登場により人気を奪われ、第二次世界大戦末期までに頭数が激減し、ほとんど絶滅した[1][5]。その後、愛好家によって犬種が保存され、頭数を回復して今日に至る[1][3]。現在では世界的に人気のある犬種で、多くがペットとして飼育されている。

日本でも一定の人気のある犬種で、毎年多くの国内登録が行われている。2009年度の国内登録頭数順位は136位中37位であった。

特徴[編集]

レバー色の毛色をしたフラットコーテッド・レトリーバー

体高はオスが59-61.5cm、メスが56.5−59cm、体重はオス27−36kg、メス25−32kgを犬種標準とする大型犬である[2][4]

ボディは、他のレトリーバーよりは細身である[4]。胸は深く、背は短めだが強固である。腰は筋肉がよく発達している。尾は短く、やや垂れて優雅に保持し、背上にかかげることはない。前肢はまっすぐで長く、後肢は筋肉に富む。頭部は長めで、平らな頭頂部を持つ。耳は小さめの垂れ耳で、目はアーモンド型で、暗褐色かはしばみ色の瞳色である。鼻はかなり大きい。顎は長く強い。

被毛は中位の長さで光沢があり、豊富である。フラット(直毛)で寝ているのを理想とするが、わずかにウェーブがかかっているのは許される[4]。犬がフル・コートにあたっている時期は、フロント、胸、前肢のうしろ、大腿、尾の下側は厚く、ふさふさしている。耳にも厚い毛がある。犬種標準では毛色はブラックかレバー色に限られる。

非常に陽気で友好的であり、子供や他の犬と遊ぶことを好む[2][4][6]。作業意欲が高く、協調性も高いため、家庭犬ドッグスポーツに向く[2]。ただし、運動量が多く、はしゃぎやすい[2]。しつけの飲み込みもとても早く賢いが、仔犬は3歳になるまでやんちゃなため初心者は手を焼く事もある[3]。泳ぐ事が得意で、セターの血を引くところから、嗅覚も優れている[2]。ソフトマウスの技術は遊びながら身に付けていくもので、主人と川や野原でキャッチボールをしながら習得する。ソフトマウス習得用に使用するボールは特殊な形状をしており、無数のトゲが付きイガグリの形状に類似したボールを使用する。これを強く咥えると口内に傷が生じ痛むため、次第に物をそっと咥えるように覚えていくのである。

遺伝的にかかりやすい病気は股関節形成不全症である。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f デズモンド・モリス著、福山英也監修『デズモンド・モリスの犬種事典』誠文堂新光社、2007年、245ページ。
  2. ^ a b c d e f g h i j 藤田りか子『最新 世界の犬種大図鑑』誠文堂新光社、2015年、352ページ。
  3. ^ a b c d 藤原尚太郎『日本と世界の愛犬図鑑 最新版』辰巳出版、2013年、61ページ。
  4. ^ a b c d e 中島眞理監修・写真『学研版 犬のカタログ2004』学習研究社、2004年、58ページ
  5. ^ ブルース・フォーグル著、福山英也監修『新犬種大図鑑』ペットライフ社、2002年、216ページ。
  6. ^ 佐草一優監修『日本と世界の愛犬図鑑 2007』辰巳出版、2006年、74ページ。

外部リンク[編集]