ニシキセタカガメ

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ニシキセタカガメ
BatagurKachuga.jpg
保全状況評価[1][2][3]
CRITICALLY ENDANGERED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: カメ目 Testudines
: イシガメ科 Geoemydidae
: アジアカワガメ属 Batagur
: ニシキセタカガメ B. kachuga
学名
Batagur kachuga (Gray, 1831)[4]
シノニム[4]

Emys kachuga Gray, 1831
Batagur ellioti Gray 1862
Batagur bakeri Lydekker 1885

和名
ニシキセタカガメ[5]
英名
Panited roofed turtle[5]
Red-crowned roofed turtle[4][5]

ニシキセタカガメ (Batagur kachuga) は、爬虫綱カメ目イシガメ科アジアカワガメ属に分類されるカメ。別名インドセタカガメ[5]

分布[編集]

インドガンジス川水系)[3]バングラデシュでは絶滅したと考えられている[3]

形態[編集]

最大甲長56センチメートル[5]。オスよりもメスの方が大型になる[5]背甲はやや扁平で、上から見ると幅広く円形に近い卵形[5]。第2・第3椎甲板後部に、わずかな隆起がある[5]。第2椎甲板後部は細くならないため、第3椎甲板と幅広く接する[5]。背甲の色彩はオリーブ色や暗褐色[5]。背甲と腹甲の継ぎ目(橋)や、腹甲の色彩は淡黄色[5]

頭部は中型から、やや大型[5]。上顎の先端は二股に分かれ、牙状の突起がある[5]。咬合面に、2つの稜がある[5]

卵は長径6.4 - 7.5センチメートル、短径3.7 - 4.6センチメートル[5]。幼体は第2・3椎甲板に明瞭な筋状の盛りあがり(キール)が明瞭があるが、成長に伴い消失する[5]

オスは頭部の色彩が青灰色。吻端から頭部へ赤い斑紋が入り、吻端から側頭部へは黄色い縦縞が2本入る[5]。頸部にも赤や黄褐色の縦縞が入る[5]。メスの頭部や頸部の色彩は、青みがかったオリーブ色や青灰色[5]

分類[編集]

以前はセタカガメ属Kachugaに分類されていた[5]。2007年に発表された核DNAとミトコンドリアDNAの分子系統解析では、セタカガメ属がカラグールガメやバタグールガメBatagur baska(後に2種に分割)を含まない多系統群という解析結果が得られた[6]。そのためカラグールガメやセタカガメ属の構成種を、(2007年の時点ではバタグールガメのみで構成されていた)より記載の早いバタグールガメ属に含める説が提唱された(アジアカワガメ属)[6]

生態[編集]

標高300 - 500メートルにある、流れの速い大型河川に生息する[5]。水深があり、日光浴や産卵を行うための砂の土手がある環境を好む[5]。土手や倒木・岩の上などで、日光浴を行う[5]

食性は飼育下での観察から、植物食と考えられている[5]

繁殖形態は卵生。3 - 4月に水場から8 - 31メートル離れた場所に42 - 54センチメートルの穴を掘って、1回に15 - 30個の卵を産んだ例がある[5]。卵は5 - 6月に孵化する[5]

人間との関係[編集]

種小名kachugaはヒンズー語でカメを表すkachuaや、ヒンドゥスタン語でカメを表すkachovaに由来する[5]

生息地では卵も含めて食用とされることもある[5]

食用の乱獲などにより生息数は減少していると考えられている[5]。河川改修による産卵場の破壊、水質汚染、漁業による混獲、人間による攪乱などによる影響も懸念されている[3]。2003年にセタカガメ属単位で、2013年からは種としてワシントン条約附属書IIに掲載された[2]。生息地では法的に保護の対象とされ、狩猟や輸出が規制されている[5]。インドでは孵化直後の幼体を飼育しある程度成長させてから、再び野生に放すという試みが行われている[3][5]

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている[5]。2000年以前の流通例は不明だが、2001年に流通した例がある[5]

出典[編集]

  1. ^ I, II and III (valid from 28 August 2020)<https://cites.org/eng> (downroad 12/02/2020)
  2. ^ a b UNEP (2020). Batagur kachuga. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. (downroad 12/02/2020)
  3. ^ a b c d e Praschag, P., Ahmed, M.F., Das, I. & Singh, S. 2019. Batagur kachuga (errata version published in 2019). The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T10949A152043133. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2019-1.RLTS.T10949A152043133.en. Downloaded on 02 December 2020.
  4. ^ a b c Turtle Taxonomy Working Group [Rhodin, A.G.J., Iverson, J.B., Bour, R. Fritz, U., Georges, A., Shaffer, H.B., and van Dijk, P.P.]. 2017. Turtles of the World: Annotated Checklist and Atlas of Taxonomy, Synonymy, Distribution, and Conservation Status (8th Ed.). In: Rhodin, A.G.J., Iverson, J.B., van Dijk, P.P., Saumure, R.A., Buhlmann, K.A., Pritchard, P.C.H., and Mittermeier, R.A. (Eds.). Conservation Biology of Freshwater Turtles and Tortoises: A Compilation Project of the IUCN/SSC Tortoise and Freshwater Turtle Specialist Group. Chelonian Research Monographs 7: Pages 1 - 292. https://doi.org/10.3854/crm.7.checklist.atlas.v8.2017.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag 安川雄一郎 「セタカガメ類の分類と自然史」『クリーパー』第27号、クリーパー社、2005年、17 - 41頁。
  6. ^ a b Minh Le, William P. McCord, John B. Iverson, "On the paraphyly of the genus Kachuga (Testudines: Geoemydidae)," Molecular Phylogenetics and Evolution, Volume 45, Issue 1, 2007, Pages 398 - 404.

関連項目[編集]