デヴィッド・スーシェ

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デヴィッド・スーシェ
David Suchet
David Suchet
生年月日 (1946-05-02) 1946年5月2日(77歳)
出生地 ロンドン
国籍 イギリスの旗 イギリス
職業 俳優
活動期間 1970 - 現在
配偶者 Sheila Ferris(1976 – )
主な作品
名探偵ポワロシリーズ
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デヴィッド・スーシェSir David Suchet [ˈsʃ] SOO-shayCBE1946年5月2日 - )は、イギリスロンドン出身の俳優LWTのテレビシリーズ『名探偵ポワロ』のエルキュール・ポワロ役でよく知られている。

略歴[編集]

南アフリカ出身の婦人科・産婦人科医ジャック・スーシェ英語版(父親はユダヤ系リトアニア人移民)と、イギリス人の母パトリシア(父親はユダヤ系ロシア人)の間に、ロンドンのパディントンで生まれる[1]。兄のジョンはニュースキャスター[2]

ロンドン音楽演劇学校で学び、1973年からロイヤル・シェイクスピア・カンパニーに参加。『オセロ』や『テンペスト』、『ロミオとジュリエット』などに特に悪役として出演した。その後、イギリスのテレビに出演するようになり、1989年から始まり2013年に完結した『名探偵ポワロ』のエルキュール・ポワロは当たり役となり、原作ほぼ全ての映像化という偉業を達成した。スーシェはポワロ役をライフワークと位置づけ、ポワロに倣ってフランス語読みに改名(それまでは英語読みで「デヴィッド・サシェット」と読ませていた)、作品を全て読み声色まで変え原作に忠実なポワロ像を描き出し、その演技は「原作に最も近いポワロ」と賞賛され、スーシェはポワロについて「この上ない贈り物を授かった。まさに神からの贈り物だ」としている。

ポワロ役をする以前の1985年にテレビ映画『エッジウェア卿殺人事件(Thirteen at Dinner)』ではポワロに反感を抱いているジャップ警部を演じている(ポワロ役はピーター・ユスティノフ)。

ジャップ警部役については「私の演技は最低だった。できれば思い出したくない」と語っているが、自伝『ポワロと私』では撮影中にユスティノフから「君ならポワロを演じられるよ。きっとはまり役だ」と言われたと記している。

舞台でも活躍しており、何度かローレンス・オリヴィエ賞などにノミネートされている。2000年には舞台版『アマデウス』でサリエリを演じ絶賛された。

2002年大英帝国勲章が授与された。

ハリウッド映画では『エグゼクティブ・デシジョン』の凶悪なアラブのテロリスト役や、『バンク・ジョブ』の裏社会のボスなど悪役を演じることが多い。

プライベート[編集]

主な出演作品[編集]

公開年 邦題
原題
役名 備考
1982 ノートルダムの鐘つき男/報われぬ愛の物語
The Hunchback of Notre Dame
クロパン・トルイユフ テレビ映画
ストップ・ザ・売春天国
The Missionary
コーベット
1983 クレムリンの赤いバラ/鉄のカーテンの向こうの懲りない人々
Red Monarch
ベリア テレビ映画
トレンチコート/危険な追跡
Trenchcoat
1984 グレイストーク -類人猿の王者- ターザンの伝説
Greystoke: The Legend of Tarzan, Lord of the Apes
ブラー
リトル・ドラマー・ガール
The Little Drummer Girl
メスターバイン
1985 脱走大陸/自由への国境は雪原の彼方
Gulag
テレビ映画
コードネームはファルコン
The Falcon and the Snowman
アレックス
名探偵ポワロ/エッジウェア卿殺人事件
Thirteen at Dinner
ジャップ警部 テレビ映画
ムッソリーニ/愛と闘争の日々
Mussolini: The Untold Story
テレビシリーズ
1986 アイアン・イーグル
Iron Eagle
アキール・ナイケシュ大佐
エド・マロー/テレビを変えた男
Murrow
ウィリアム・L・シャイラー テレビ映画
1987 情事の突破口!/追いつめられたエリート弁護士の復讐
The Last Innocent Man
ジョナサン テレビ映画
ハリーとヘンダスン一家
Harry and the Hendersons
ジャック
1988 ワールド・アパート
World Apart
ミュラー
ワルシャワの悲劇 神父暗殺
To Kill a Priest
司祭
1989-2013 名探偵ポワロ
Agatha Christie's Poirot
エルキュール・ポワロ テレビシリーズ
1992 ルコナ号沈没の謎を追え!
Der Fall Lucona
1996 エグゼクティブ・デシジョン
Executive Decision
ナジ・ハッサン
十戒
Moses
アロン テレビ映画
NO EXIT 海上の惨劇
Deadly Voyage
テレビ映画
1997 SUNDAY それぞれの黄昏
Sunday
オリヴァー/マシュー・デラコルタ
フェニックスと魔法のじゅうたん
The Phoenix and the Carpet
フェニックス テレビシリーズ
1998 ダイヤルM
A Perfect Murder
モハメド・カラマン
1999 ウィング・コマンダー
Wing Commander
ジェイソン・サンスキー
ザ・ディレクター [市民ケーン]の真実
RKO 281
ルイス・B・メイヤー テレビ映画
2003 セイブ・ザ・ワールド
The In-Laws
ジャン=ピエール・ティボドゥ
ダブルバウンド
FoolProof
レオ
2006 ドラキュラvsヴァン・ヘルシング
Dracula
アブラハム・ヴァン・ヘルシング テレビ映画
2007 デイ・アフター 首都水没
Flood
キャンベル副首相
2008 バンク・ジョブ
The Bank Job
ロウ・ヴォーゲル
2011 大いなる遺産
Great Expectations
ジャガーズ弁護士 全3回のテレビミニシリーズ
2012 ホロウ・クラウン/嘆きの王冠
The Hollow Crown
ヨーク公エドマンド・オブ・ラングリー テレビ映画
2017 ドクター・フー ランドロード 第10シリーズ第4話
アメリカン・アサシン スタンスフィールド長官

日本語吹き替え[編集]

NHKおよびCSで放送される『名探偵ポワロ』とその関連番組の日本語版では熊倉一雄がスーシェの声を吹き替え、人気を博した。熊倉とスーシェの声質は必ずしも似ているわけではないが、その独特の語り口はスーシェ同様日本におけるポワロのイメージとして定着するに至った。熊倉の吹き替えはスーシェ本人からも「熊倉の声が最もポワロの声によく似合う」とお墨付きをもらっており[3]、「魅力の半分以上は、日本語版の声(熊倉)である」とも評されるほど海外ドラマファンにとっては馴染み深い著名なものとなっている[4][5]

一方、デアゴスティーニ・ジャパンから発売された『名探偵ポワロ』では、デアゴスティーニによる独自の吹替版が新録されており、上記の熊倉によるNHKの日本語版とはキャストが異なる(スーシェの吹き替えは大塚智則)。

『ポワロ』以外の作品でスーシェの吹き替えを担当した声優は以下の通り。

出典[編集]

  1. ^ David Suchet” (英語). Who Do You Think You Are?. BBC. 2017年3月23日閲覧。
  2. ^ British Library Archival Sound Recordings” (英語). Sounds.bl.uk. 2009年2月13日閲覧。
  3. ^ 橋本達典「アガサ・クリスティー特集 熊倉一雄Special Comment」『ジェイコムマガジン』第21巻第9号、ジェイコム東京、23頁。 
  4. ^ 声優の草分け・熊倉一雄と井上ひさしのコンビが名舞台を生んだ”. 文春写真館 - 本の話. 文藝春秋 (2016年4月11日). 2021年2月13日閲覧。
  5. ^ “親しみあるポワロ像を作り上げた熊倉一雄が死去”. 海外ドラマNAVI. (2015年10月19日). https://dramanavi.net/articles/131387 2023年12月22日閲覧。 

外部リンク[編集]