スインホーキノボリトカゲ

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スウィンホーキノボリトカゲ
スウィンホーキノボリトカゲ
Diploderma swinhonis
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: 有鱗目 Squamata
: アガマ科 Agamidae
亜科 : Draconinae
: キノボリトカゲ属 Diploderma
: スウィンホーキノボリトカゲ
D. swinhonis
学名
Diploderma swinhonis
(Günther, 1864)[2][3][4]
シノニム

Japalura swinhonis Günther, 1864
Japalura mitsukurii Stejneger, 1898

和名
スウィンホーキノボリトカゲ[2]
英名
Taiwan japalure[3]

スウィンホーキノボリトカゲ(学名:Diploderma swinhonis)は、爬虫綱有鱗目アガマ科キノボリトカゲ属に分類されるトカゲ。

分布[編集]

台湾の標高1,500メートル以下の低地および周辺の島嶼(小琉球蘭嶼緑島[5]

分類[編集]

以前は、旧キノボリトカゲ属Japaluraに分類されていた。2018年(論文の発行は2019年だが、2018年にオンライン上で発表)に形態と核DNAミトコンドリアDNAの分子系統推定から、旧キノボリトカゲ属を4属(新属CristidorsaDiploderma属をシノニムから復活させる・Japalura属・別属Pseudocalotesに含む)に分割する説が提唱された[4]。本種はそのうちキノボリトカゲを模式種とした、キノボリトカゲ属Diplodermaに分類された[4]

古くは台湾に分布する旧キノボリトカゲ属が、Japalura swinhonisJapalura mitsukuriiとされることもあった[6]。このうち後者は本種の模式標本と比較されることなく新種記載され、後に本種のシノニムであることが判明した[6]。前者のJ. swinhonisとされていたキノボリトカゲ類が実際には本種ではなく未記載であることが判明し、1991年にキノボリトカゲの亜種キグチキノボリトカゲJapalura polygonatum xanthostoma(2019年現在の分類ではDiploderma polygonatum xanthostomum)として記載された[6]

生態[編集]

鱗翅目の幼虫やアリ類などの昆虫を食べる[7]。日本では消化管の内容物の調査から主にアミメアリハリブトシリアゲアリなどのアリ類が検出され、スグリゾウムシPseudocneorhinus bifasciatus・外来種のアルファルファタコゾウムシナミテントウなどの甲虫類、コカマキリStatilia maculataやオオカマキリ属Tenodera、シャクガ科Geometridaeやハマキガ科Tortricidaeといった鱗翅目の幼虫なども検出された報告例がある[7]

4 - 9月に産卵する[7]。日本では6 - 7月の産卵例、8月に輸卵管から卵の発見例、9月に4個の卵を産んだ例がある[7]。メスは頭胴長6.33センチメートル以上で、性成熟する[7]

人間との関係[編集]

日本では2006年に、磐田市で初めて定着が確認された(台湾から輸入された植物に紛れ込んでいたと推定されている)[8]2014年には羽島市で、台湾からの貨物に紛れ込んでいたと思われる個体が発見された[9]2016年日向市で、ネコが捕獲した個体が発見された[10]。2016年には厚木市でも捕獲例があり、2017年5月から2018年7月までに48個体が捕獲された[11]。年をまたいで様々な成長段階の個体が複数捕獲されたこと・捕獲したメスが有精卵を産んだことから、磐田市に次いで厚木市でも定着したと考えられている[11]。 日本では2016年8月に特定外来生物に指定(2016年10月施行)され、飼養・保管・運搬・放出・輸入などが規制された[12]。2015年に環境省の生態系被害防止外来種リストにおける総合対策外来種のうち、その他の総合対策外来種に指定されている[12]

参考文献[編集]

  1. ^ Shang, G. 2019. Diploderma swinhonis. The IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T103308497A103308500. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2019-3.RLTS.T103308497A103308500.en. Accessed on 27 October 2023.
  2. ^ a b 日本爬虫両棲類学会 (2019) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2019年11月7日版). http://herpetology.jp/wamei/ (2019年11月21日閲覧).
  3. ^ a b Diploderma swinhonis. Uetz, P. & Jiri Hošek (eds.) (2019) The Reptile Database, http://www.reptile-database.org, accessed 05 Sep 2019
  4. ^ a b c Kai Wang, Jing Che, Simin Lin, V Deepak, Datta-Roy Aniruddha, Ke Jiang, Jieqiong Jin, Hongman Chen, Cameron D Siler, "Multilocus phylogeny and revised classification for mountain dragons of the genus Japalura s. l. (Reptilia: Agamidae: Draconinae) from Asia," Zoological Journal of Linnean Society, Volume 185, Issue 1, 2019, Pages 246-267.
  5. ^ スウィンホーキノボリトカゲ 国立環境研究所 (2019年11月21日閲覧)
  6. ^ a b c 疋田努スタイネガー (1907) に掲載された日本とその周辺地域のトカゲ類の分類」『爬虫両棲類学会報』第2007巻 2号、日本爬虫両棲類学会、2007年、173-181頁。
  7. ^ a b c d e 加藤英明・大庭峻輔・大庭俊司・衛藤英男・多比良嘉晃 「静岡県磐田市におけるスインホーキノボリトカゲ Japalura swinhonis Günther (Squamata, Agamidae) の繁殖と食性」『東海自然誌』第6号、静岡県自然史博物館ネットワーク、2013年、35-38頁。
  8. ^ 加藤英明・細田昭博・大庭俊司・衛藤英男 「静岡県で記録されたスインホーキノボリトカゲ Japalura swinhonis Gunther (Squamata,Agamidae)」『日本生物地理学会会報』第65巻、日本生物地理学会、2010年、9-12頁。
  9. ^ 向井 貴彦・田上 正隆 「岐阜県羽島市で捕獲されたスウィンホーキノボリトカゲ」『日本生物地理学会会報』第71巻、日本生物地理学会、2017年、249-251頁
  10. ^ 宮崎県日向市でのスウィンホーキノボリトカゲの確認について環境省・2019年11月21日に利用)
  11. ^ a b 槐真史・岩下歩叶・川崎守・鉄谷龍之・加藤英明 「神奈川県厚木市におけるスウィンホーキノボリトカゲJapalura swinhonisの生息状況」『神奈川県自然史資料』第40号、2019年、85-87頁。
  12. ^ a b 特定外来生物等一覧特定外来生物等一覧(指定日別)生態系被害防止外来種リスト環境省・2019年11月21日に利用)

 

関連項目[編集]