キタムラサキウニ

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キタムラサキウニ
分類
: 動物界 Animalia
: 棘皮動物門 Echinodermata
: ウニ綱 Echinoidea
: カマロドント目 Camarodonta
: オオバフンウニ科 Strongylocentrotidae
: キタムラサキウニ属 Mesocentrotus
: キタムラサキウニ
学名
Mesocentrotus nudus (A. Agassiz, 1864)
シノニム
  • Strongylocentrotus nudus
  • Toxocidaris nuda[1]
和名
キタムラサキウニ

キタムラサキウニ(北紫海胆[2]、学名:Mesocentrotus nudus[3])は、オオバフンウニ科に属するウニの一種。本州北部から北海道の沿岸で普通にみられ[2]、食用として最も流通するウニの一つ[3]。英名はNorthern Sea Urchin[4]

特徴[編集]

成体の殻の直径は6から7センチメートル、棘の長さは2から3センチメートルくらい[2]。棘は暗緑色[2]、暗紫色、または暗褐色で、表面に細かい縦線がある[5]。本種より南方に分布するナガウニ科ムラサキウニによく似ている[2]。冷水性で、水温26-30℃以上では斃死する[6]

分布[編集]

相模湾より北、日本海側では島根県より北、北海道に分布する[3]。日本以外では朝鮮半島、中国北部沿岸に分布する[2]

生態[編集]

生息域は潮間帯から水深180メートルくらいまで[3]。受精後1日から2日でふ化し、プルテウス幼生と呼ばれる形態で植物プランクトンを食べながら1か月から2か月ほど海水中を漂って生活する[7]。その後、海底に着底し、変態して0.5ミリほどの稚ウニとなる[7]。若い個体は転石の下、成体は岩礁の上などに生息する[3]海藻、生物の破片、腐食物などを摂食する[2]。餌が十分であれば2年目より産卵を開始する[7]。産卵期は福島県や青森県では7月から10月頃[8][6]、北海道では9月から10月頃[9]。寿命は14年から15年程度[6]ムラサキウニと違い岩の穴の中へ入る習性はない[2]

利用[編集]

生殖巣(卵巣・精巣)を食用とする[10][9]。大半は生で食されるが、蒸しウニや、塩ウニなどの加工品もある[9]。福島県などではウニの貝焼きが有名[11][12]。北海道では生殖巣は6月から8月頃に最も発達し、産卵期の9月から10月頃は禁漁となる[9]

磯焼け対策も兼ねて、廃棄野菜などを活用した養殖の試みもなされている[13][14][15]

地方名[編集]

ムラサキウニ[9]、ノナ[9]、クロカゼ[6]、ガゼ[8]。また魚市場などでは生殖巣の色から、エゾバフンウニを「赤」、キタムラサキウニを「白」と呼ぶ[11]

分類について[編集]

分類については、カマロドント目(Camarodonta[3]、エキヌス目[注釈 1]Echinoida[10]としている資料がある。学名については、Mesocentrotus nudus[3]、Strongylocentrotus nudus[2]としている資料がある。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ホンウニ目と訳されていることがある[16]

出典[編集]

  1. ^ Kroh A, Mooi R (eds.). "Mesocentrotus nudus (A. Agassiz, 1864)". World Echinoidea Database. World Register of Marine Species. 2023年4月7日閲覧
  2. ^ a b c d e f g h i "キタムラサキウニ". 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンクより2023年4月7日閲覧
  3. ^ a b c d e f g ウニハンドブック 2019, p. 61.
  4. ^ キタムラサキウニ:うに漁業(エゾバフンウニ・キタムラサキウニ)”. マリンネット北海道. 北海道立総合研究機構. 2023-04-080閲覧。
  5. ^ "キタムラサキウニ". 平凡社世界大百科事典 第2版. コトバンクより2023年4月7日閲覧
  6. ^ a b c d キタムラサキウニ”. 青森県産業技術センター. 2023年4月8日閲覧。
  7. ^ a b c ミニ知識/ウニ”. 岩手県水産技術センター. 2023年4月10日閲覧。
  8. ^ a b キタムラサキウニ”. 福島県庁. 2023年4月8日閲覧。
  9. ^ a b c d e f キタムラサキウニ[北紫海胆]”. 水産林務部水産局水産経営課. 北海道庁. 2023年4月8日閲覧。
  10. ^ a b "キタムラサキウニ". ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典. コトバンクより2023年4月7日閲覧
  11. ^ a b キタムラサキウニ”. 市場魚貝類図鑑. 2023年4月8日閲覧。
  12. ^ 貝殻にウニの身を乗せ蒸し焼き 名物「貝焼き」づくりが最盛期|NHK 福島県のニュース”. NHK (2022年5月30日). 2023年4月8日閲覧。
  13. ^ ウニの味、餌で違う! キャベツなど4種類与え食味実験 宮城水産高”. 河北新報ONLINE (2022年7月29日). 2023年4月8日閲覧。
  14. ^ 【富山】氷見高ウニ 色と味よし 昨年から養殖実験”. 中日新聞 (2023年2月1日). 2023年4月8日閲覧。
  15. ^ ウニ養殖、エサはタケノコ 荒れる竹林対策との一石二鳥”. 朝日新聞デジタル (2020年8月25日). 2023年4月8日閲覧。
  16. ^ ウニ綱 Echinoidea”. 日本分類学会連合. 2023年4月8日閲覧。

参考文献[編集]

  • 田中颯; 大作晃一; 幸塚久典『ウニ ハンドブック』文一総合出版、2019年10月29日。ISBN 978-4-8299-8165-8 

関連項目[編集]