カリガネ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
カリガネ
カリガネ
カリガネ Anser erythropus
保全状況評価[1]
VULNERABLE
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 鳥綱 Aves
: カモ目 Anseriformes
: カモ科 Anatidae
: マガン属 Anser
: カリガネ A. erythropus
学名
Anser erythropus (Linnaeus, 1758)[2]
和名
カリガネ[2][3][4][5]
英名
Lesser white-fronted goose[2][3][4][5]
Anser erythropus
Anser erythropus

カリガネ(雁金[3][6]Anser erythropus)は、鳥綱カモ目カモ科マガン属に分類される鳥類。

分布[編集]

アルバニアアルメニアイラクイランインドウクライナウズベキスタンエストニアカザフスタンギリシャグルジアクロアチアシリアスウェーデンスロバキアスロベニアセルビア大韓民国チェコ中華人民共和国朝鮮民主主義人民共和国トルクメニスタン日本ノルウェーハンガリーフィンランドブルガリアボスニア・ヘルツェゴビナポーランド北マケドニア共和国モンゴルモンテネグロラトビアリトアニアルーマニアロシア[1]

ロシアの北極圏内の地域やスカンジナビア半島で繁殖し、冬季にインドや中華人民共和国・日本・ハンガリー・カスピ海南岸部や黒海沿岸域などへ南下し越冬する[5]。スカンジナビア半島からヨーロッパロシアで繁殖しヨーロッパ南部から中央アジアにかけての地域で越冬する個体群と、ロシアで繁殖し中華人民共和国・日本・朝鮮半島で越冬する2つの個体群に分かれる[2]。日本には冬季に島根県の宍道湖や宮城県の伊豆沼長沼などで越冬し(冬鳥)、秋期は渡りの途中に北海道のサロベツ原野などにも飛来する(旅鳥)[2]

形態[編集]

全長53 - 66センチメートル[3]。翼長36 - 39センチメートル[3]。翼開長128センチメートル[5]体重1.4 - 2.5キログラム[3]。全身は暗褐色[2][5]。額から頭頂にかけては白い[5]。腹部に不規則な黒い横縞が入る[2]。尾羽基部を被う羽毛(上尾筒、下尾筒)の色彩は白い[5]。翼が長く、翼の先端が尾羽よりも後方に突出する[4]

眼瞼は黄色[4]。嘴は短い[3]。嘴の色彩はピンク色[3][5]。後肢の色彩は橙色[2][3]

生態[編集]

湿地や農耕地・牧草地などに生息する[3]。和名のカリは鳴き声に由来し、元々はマガン属の構成種広範を指していた[6]

食性は植物食で、スゲなど)、木の葉などを食べる[5]

繁殖様式は卵生。主にツンドラ地帯と森林ツンドラの境目で繁殖する[3]。5 - 6月に3 - 8個(平均5個)の卵を産む[4]。抱卵期間は25 - 28日[3]。雛は孵化してから約35日で飛翔できるようになる[4]

人間との関係[編集]

開発による生息地の破壊、狩猟などにより生息数は減少している[5]1981年にはスウェーデンとオランダ間の渡りを復活させるため、カオジロガンを仮親とした試みが進められ成果をあげている[5]。ハンガリーでの1950年代以前における越冬個体数は120,000羽以上、1980年代における越冬個体数は数千羽と推定されている[5]洞庭湖での1996年における越冬個体数は、566羽が観察されている[3]

日本
江戸時代には徳川実紀などの全国に飛来していた文献記録があるが、マガンと混同されることもあり発見が難しく記録も乏しかった[2]。日本では日本雁を保護する会の調査から、1999年以降は最大100羽程度がサロベツ原野などに渡りの途中で飛来し、宮城県北部の伊豆沼などで越冬することが判明している[2]。宍道湖でも約25羽が越冬している[5]。1999 - 2007年にかけての飛来数は漸増傾向にある[2]
絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト[2]

日本では1978年に、多摩動物公園が人工照明で白夜を再現することで飼育下繁殖に成功した[7]

カリガネを意匠化した雁金紋が家紋として使用された。

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b BirdLife International 2018. Anser erythropus. The IUCN Red List of Threatened Species 2018: e.T22679886A132300164. doi:10.2305/IUCN.UK.2018-2.RLTS.T22679886A132300164.en. Downloaded on 09 June 2019.
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 呉地正行 「カリガネ」『レッドデータブック2014 -日本の絶滅のおそれのある野生動物-2 鳥類』環境省自然環境局野生生物課希少種保全推進室編、株式会社ぎょうせい、2014年、88-89頁。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 呉地正行 「カリガネ」『日本動物大百科 3 鳥類I』日高敏隆長久監修、平凡社、1996年、62頁。
  4. ^ a b c d e f 黒田長久・森岡弘之監修 「ガンカモ科の分類」『世界の動物 分類と飼育 (ガンカモ目)』、財団法人東京動物園協会、1980年、14-88頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m 竹下信雄 「カリガネ」『動物世界遺産 レッド・データ・アニマルズ1 ユーラシア、北アメリカ』小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文編著、講談社、2000年、183頁。
  6. ^ a b 安部直哉 『山溪名前図鑑 野鳥の名前』、山と溪谷社、2008年、299頁。
  7. ^ 小宮輝之 「カリガネの繁殖 人工照明による日長調節の試み」『世界の動物 分類と飼育 (ガンカモ目)』黒田長久・森岡弘之監修、財団法人東京動物園協会、1980年、119-124頁。