カッショクハイエナ

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カッショクハイエナ
カッショクハイエナ
カッショクハイエナ Hyaena brunnea
保全状況評価[1]
NEAR THREATENED
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 食肉目 Carnivora
: ハイエナ科 Hyaenidae
亜科 : ハイエナ亜科 Hyaeninae
: シマハイエナ属 Hyaena
亜属 : Parahyaena Hendey, 1974[2]
: カッショクハイエナ H. brunnea
学名
Hyaena brunnea
Thunberg, 1820[3][4]
シノニム[4]
  • Hyaena fusca Geoffroy St.-Hilaire, 1825
  • Hyaena striata Smith, 1826
  • Hyaena villosa Smith, 1827
和名
カッショクハイエナ[3]
英名
Beach wolf[3]
Brown hyena[1][3][4]
Strand wolf[3]

カッショクハイエナ(褐色鬣犬[5]、学名: Hyaena brunnea)は、ハイエナ科シマハイエナ属に分類される食肉類。本種のみでParahyaena属を構成する説もある[2]

分布[編集]

アンゴラ南西部、ジンバブエナミビアボツワナ南東部、南アフリカ共和国[1]

模式標本の産地(基準産地・タイプ産地・模式産地)は、喜望峰[4]

形態[編集]

頭胴長(体長)110 - 140センチメートル[3]。尾長20 - 27センチメートル[3]。体高65 - 88センチメートル[3]体重35 - 50キログラム[3]。平均11.2センチメートルの、暗褐色の粗い体毛で被われる[4]。独名Schabrackenhyaeneは、本種の長い体毛に由来する[4]。頭部は灰色[3]

生態[編集]

夜行性[4]、昼間は穴の中で休む[3]カラハリ南部では、行動圏は235 - 480平方キロメートルに達するという報告例もある[4]。時速4キロメートルで歩行するが、時速40 - 50キロメートルで走行することもできる[4]。カラハリ南部では1日のうち42.6 %を食物の探索に費やし、1晩あたり2 - 54キロメートル(平均32キロメートル)を移動したという報告例もある[4]

主に動物の死骸を食べるが、甲虫類やシロアリ類などの昆虫鳥類の卵、スイカなどの果実なども食べる[4]。トビウサギ類、スプリングボックの幼獣、オオミミギツネなどの小動物を捕食することもある[4]。沿岸部ではカニ類、魚類、鳥類、海岸に打ち上げられた海洋哺乳類などを食べる[4]。独名やアフリカーンス語の名称であるStrandwolfは英名のBeach wolfと同義で、海岸で採食を行うことに由来する[4]。語食物は単独で探し、死骸などは群れで分配する[3]。水分は主にスイカなどの果実から摂取し、飲めるときには飲むと考えられているものの水を必要としない[4]

野生下ではカラハリ南部で12年以上の生存例が報告されており、飼育下でも13年以上の生存例が報告されている[4]

人間との関係[編集]

骨などが薬用になると信じられていたり、スポーツハンティングの対象とされることもある[1]

2015年の時点では、生息数は安定していると考えられている[1]。一方で害獣としての駆除、イヌによる捕食などによる影響が懸念されている[1]1975年のワシントン条約発効時にワシントン条約附属書Iに、1995年からはワシントン条約附属書IIに掲載されていたが、2000年に掲載が抹消された[6]

日本では2021年の時点でハイエナ科単位で特定動物に指定されており、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止された(2020年6月に施行)[7]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f Wiesel, I. 2015. Parahyaena brunnea. The IUCN Red List of Threatened Species 2015: e.T10276A82344448. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2015-4.RLTS.T10276A82344448.en. Downloaded on 08 February 2021.
  2. ^ a b Lars Werdelin & Nikos Solounias, “The Hyaenidae: taxonomy, systematics and evolution,” Fossils and Strata, No. 30, Scandinavian University Press, 1991, Pages 1–104. https://doi.org/10.18261/8200374815-1991-01.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l 川口幸男 「ハイエナ科の分類」『世界の動物 分類と飼育2 (食肉目)』今泉吉典監修、東京動物園協会、1991年、119 - 123頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p M. G. L. Mills, "Hyaena brunnea," Mammalian Species, No. 194, American Society of Mammalogists, 1982, Pages 1 - 5.
  5. ^ 祖谷勝紀. “「カッショクハイエナ」の解説”. 日本大百科全書(ニッポニカ)(コトバンク). 2021年9月15日閲覧。
  6. ^ UNEP (2021). Hyaena brunnea. The Species+ Website. Nairobi, Kenya. Compiled by UNEP-WCMC, Cambridge, UK. Available at: www.speciesplus.net. [Accessed 08/02/2021]
  7. ^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理)環境省・2021年2月8日に利用)

関連項目[編集]