ウォンバット

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ウォンバット
ウォンバット
ウォンバット Vombatus ursinus
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 双前歯目 Diprotodontia
亜目 : ウォンバット型亜目 Vombatiformes
: ウォンバット科 Vombatidae
: ウォンバット属
Vombatus É. Geoffroy, 1803[2]
: ウォンバット V. ursinus
学名
Vombatus ursinus (Shaw, 1800)[1][2]
シノニム

Didelphis ursina Shaw, 1800[2]

和名
ウォンバット[3]
ヒメウォンバット[4]
英名
Coarse-haired wombat[1][5]
Common wombat[1][2]

ウォンバット(Vombatus ursinus)は、哺乳綱双前歯目ウォンバット科ウォンバット属に分類される有袋類。本種のみでウォンバット属を構成する。別名ヒメウォンバット[4]

名前はダルク語に由来する。生態は異なるがコアラに近いウォンバット型亜目の動物である。

分布[編集]

オーストラリアクイーンズランド州南東部、タスマニア州ニューサウスウェールズ州東部、ビクトリア州南部、南オーストラリア州南東部)[2]

模式標本の産地(基準産地・タイプ産地・模式産地)はタスマニア州[2]

オーストラリアクイーンズランド州の一部、および、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、南オーストラリア州、西オーストラリア州、タスマニア州の低木林や草原に分布する[6]

形態[編集]

体長90 - 115センチメートル[4]。尾長2.5センチメートル[4]。体重22 - 39キログラム[4]。頭胴長は70-110cm、尾長は25-60mm、体重は19-33kg[6]。粗い体毛で被われる[4][5]。体色は黒や褐色、灰色[4]。雌のほうが雄よりも大きい。ずんぐりとした体付きで、内股で歩く。

耳介は短く、丸みを帯びる[4]。吻端には体毛がなく、裸出する(鼻鏡がある)[4][5]。頑丈な前脚を持ち、トンネル状の大きな巣穴を作る。

生態[編集]

ユーカリ林・低木林などに生息する[4]。夏季は夜行性で、昼間は巣穴の中で休む[4]。冬季は、昼間に活動することもある[4]。夜行性で昼間は主に巣穴の中で過ごすが、曇りの日などはエサを求め動き回ることもある。短い距離であれば、時速40kmほどで走ることができる[6]

草本や低木の根などを食べる[4]。草食性で植物の葉や根を食べる。腸の組織の柔軟性が部分的に異なっていることで、水分や養分の吸収過程で食べた食物が角柱状に固まりやすく、それを排泄すると、切れて立方体直方体[7]となりやすい。捕食者(天敵)はディンゴタスマニアデビルオナガイヌワシなどが挙げられる[5]。敵に襲われた時、穴に入り硬いお尻で自らを守ることがある。

1回に、1頭の幼獣を産む[4]。1腹1子。穴を掘る為、お腹の袋は後ろ向きについている。生後2年で、性成熟する[1][4][5]

キューブ状の糞
ウォンバットはキューブ状の糞を岩の上などの目立つところにすることで、縄張りの印としている。繊維の多い餌を食べた糞は、腸内の最後後8%以降の部分で腸内運動によって四角く成型される。糞が固く四角くなるために、容易に転がり落ちない利点がある[8][9]

人間との関係[編集]

巣穴を掘ることで畜産業の妨げとなったり、アナウサギに抜け穴を提供してしまうため、害獣とみなされることもある[5]

種として絶滅のおそれは低いと考えられているが、農地開発による生息地の破壊・交通事故・イヌによる捕食などの影響は懸念されている[1]。ほとんどの地域で、州による保護の対象とされている[1]

ウォンバットの掘った巣穴にトラクターや家畜が落ちることがあるため害獣とされ、かつては駆除されていたこともあるが、現在は保護動物である[6][10]。しかし、現在も南オーストラリア州西オーストラリア州南部において、不法に駆除されることがあり減少を止められていないが、政府や動物保護団体などが保護している[11]

2024年4月現在、日本では茶臼山動物園長野市)で1頭、五月山動物園池田市)で3頭のヒメウォンバットを見ることが出来る。過去には円山動物園札幌市)や多摩動物公園日野市[12]金沢動物園横浜市)や東山動植物園名古屋市)などでも飼育されていた。 飼育下では人に良く馴れ、人懐っこく人との接触を好む。

おとなしい性質だが、極めて稀に人を襲うこともある。ある事故では被害者がキャンピングカーから降りた際に、疥癬にかかったことにより興奮状態になったウォンバットの上に立ってしまったことが原因で襲われた[13]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g Taggart, D., Martin, R. & Menkhorst, P. 2016. Vombatus ursinus. The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T40556A21958985. doi:10.2305/IUCN.UK.2016-2.RLTS.T40556A21958985.en. Downloaded on 22 July 2019.
  2. ^ a b c d e f Colin P. Groves, "Order Diprotodontia," Mammal Species of the World, (3rd ed.), Volume 1, Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (ed.), Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 43-70.
  3. ^ 川田伸一郎, 岩佐真宏, 福井大, 新宅勇太, 天野雅男, 下稲葉さやか, 樽創, 姉崎智子, 横畑泰志世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 白石哲 「おとなしい「穴掘り名人」 ウォンバット」『動物たちの地球 哺乳類I 2 カンガルー・コアラほか』第8巻 38号、朝日新聞社、1992年、60-61頁。
  5. ^ a b c d e f Benjamin Galetka, 2013. "Vombatus ursinus" (On-line), Animal Diversity Web. Accessed July 22, 2019 at https://animaldiversity.org/accounts/Vombatus_ursinus/
  6. ^ a b c d Cath Jones and Steve Parish, Field Guide to Australian Mammals, Steve Parish Publishing, ISBN 174021743-8
  7. ^ Wombat poop: Scientists reveal mystery behind cube-shaped
  8. ^ Wombat poop: Scientists reveal mystery behind cube-shaped droppings(BBC)
  9. ^ ウォンバットのうんちはなぜ四角いのか(著:行動生態学者 ルイーズ・ジェントル、出版社:ニューズウィーク・ジャパン)
  10. ^ デイビッド・バーニーほか編 日高敏隆ほか日本語版監修 『世界動物大図鑑』、ネコ・パブリッシング、2004年初版第2刷、95頁
  11. ^ Wombat killing 'out of control' LARINA STATHAM October 01, 2009 12:01am[リンク切れ]
  12. ^ 1986年9月に飼育展示開始、2014年11月に死亡。 ウォンバット「チューバッカ」が死亡しました”. 東京ズーネット. 2016年5月1日閲覧。
  13. ^ jp.reuters.com - オーストラリアの男性、ウォンバットに襲われ病院に。telegraph.co.uk - Man in hospital after wombat attack. Bonnie Malkin, Telegraph, 2010年4月9日閲覧。news.sky.com[リンク切れ] - Bushfire Victim Hurt In Freak Wombat Attack. Adam Arnold, SKy News Online, 2010年4月9日閲覧

関連項目[編集]