ウルップソウ

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ウルップソウ
ウルップソウ(得撫草、学名:Lagotis glauca Gaertn. )、白馬岳の高山帯(長野県白馬村、2015年7月31日)にて
ウルップソウ (白馬岳の高山帯、2015年7月末)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : シソ類 lamiids
: シソ目 Lamiales
: オオバコ科 Plantaginaceae
: クワガタソウ連 Veroniceae
: ウルップソウ属 Lagotis
: ウルップソウ L. glauca
学名
Lagotis glauca Gaertn.[1][2]
和名
ウルップソウ

ウルップソウ(得撫草[3]学名Lagotis glauca Gaertn.)は、オオバコ科[1]ウルップソウ属分類される多年草の1。北の浜に生育することから別名がハマレンゲ[1][4](浜蓮華[3][5]新エングラー体系およびクロンキスト体系では、ウルップソウ科 (Globulariaceae) に分類されている[6][7]

特徴[編集]

寒冷地や高山の斜面などの湿った砂礫地に生える[5]。花茎は高さ15–25 cm[4]は卵円形または広楕円形で、長さ幅とも4–10 cm の肉質で表面につやがある[4]。全体に無毛[5]。青紫色の花を穂状に多数付け、雄しべは花弁よりも短い[8]。花穂は円柱形で、各花にがある[9]。開花時期は6–8月[8]染色体数は2n=22(2倍体)[3]。和名の由来は千島列島得撫島で最初に発見されたことによる[4][5][10]。属名のLagotisは、ギリシャ語のlogos()とous(耳)からなり、葉の形状が兎の耳に似ていたことに由来する[9]

分布[編集]

アリューシャン列島カムチャツカ半島、千島列島、日本に分布する[5]

日本では北海道礼文島[4]空知)と本州飛騨山脈北部の白馬岳[11]雪倉岳[4])、八ヶ岳硫黄岳[12]横岳高山帯に隔離分布している[6]氷期に日本に南下し、その後高山などの一部地域だけに生き残ったと考えられている[13]基準標本は得撫島のもの[6]

種の保全状況評価[編集]

準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト

環境省によりレッドリストの準絶滅危惧 (NT) の指定を受けている[7]。以前は絶滅危惧IB類 (EN) 指定であったが、絶滅危惧II類 (VU) に変更された。踏みつけが減少の主要因で、平均減少率は約30%、個体総数は約10,000と推定されている[7]。以下の都道府県で、レッドリストの指定を受けている[14]

近縁種[編集]

  • ホソバウルップソウ(細葉得撫草、Lagotis yesoensis) - 大雪山系に自生、環境省により絶滅危惧IB類(EN)の指定を受けている。
  • シロバナウルップソウ(白花得撫草、Lagotis yesoensis f. albiflora) - ウルップソウの白花のもの
  • ユウバリソウ(夕張草、Lagotis takedana) - 夕張岳に自生、環境省により絶滅危惧IB類(EN)の指定を受けている。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 北海道のカテゴリ「絶滅危機種(Cr)」は、環境省のカテゴリ絶滅危惧IA類相当。

出典[編集]

  1. ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2013年4月28日). “ウルップソウ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2015年8月6日閲覧。
  2. ^ Lagotis glauca Gaertn.(ウルップソウ)” (英語). ITIS. 2011年9月9日閲覧。
  3. ^ a b c 清水 (2014)、330頁
  4. ^ a b c d e f 山崎 (1981)、122頁
  5. ^ a b c d e 牧野 (1982)、502頁
  6. ^ a b c 豊国 (1988)、164頁
  7. ^ a b c 植物絶滅危惧種情報検索(ウルップソウ)”. 生物多様性情報システム. 2011年9月9日閲覧。
  8. ^ a b 永田 (2006)、102頁
  9. ^ a b 林 (2009)、168頁
  10. ^ a b 北海道レッドデータブック・「ウルップソウ」”. 北海道 (2001年). 2015年8月6日閲覧。
  11. ^ 花の百名山地図帳 (2007)、154頁
  12. ^ 花の百名山地図帳 (2007)、177頁
  13. ^ 礼文花図鑑(ウルップソウ)”. 礼文町. 2011年9月9日閲覧。
  14. ^ 日本のレッドデータ検索システム「ウルップソウ」”. (エンビジョン環境保全事務局). 2015年8月6日閲覧。 - 「都道府県指定状況を一覧表で表示」をクリックすると、出典の各都道府県のレッドデータブックのカテゴリー名が一覧表示される。

参考文献[編集]

  • 清水建美門田裕一、木原浩『高山に咲く花』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑8〉、2014年3月22日。ISBN 978-4635070300 
  • 豊国秀夫『日本の高山植物』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、1988年9月。ISBN 4-635-09019-1 
  • 佐竹義輔大井次三郎北村四郎、亘理俊次、冨成忠夫 編『日本の野生植物 草本III合弁花類』平凡社、1981年10月。ISBN 4582535038 
  • 永田芳男『夏の野草』山と溪谷社〈山溪フィールドブックス〉、2006年10月。ISBN 4635060675 
  • 山と溪谷社 編『花の百名山地図帳』山と溪谷社、2007年6月20日。ISBN 9784635922463 
  • 林弥栄『日本の野草』山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2009年10月。ISBN 9784635090421 
  • 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZENCID BN00811290全国書誌番号:85032603https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]