グイン・サーガ

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マグノリアの海賊から転送)
グイン・サーガ
ジャンル ヒロイック・ファンタジー[1]群像劇[2]
小説
著者 栗本薫(130巻まで)
イラスト 加藤直之
天野喜孝
末弥純
丹野忍
出版社 早川書房
レーベル ハヤカワ文庫
刊行期間 1979年9月 -
巻数 既刊175巻(本編148巻+外伝27巻)
(2023年7月現在)
その他 書誌情報はグイン・サーガの小説一覧を参照
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グイン・サーガ』は、栗本薫による日本ヒロイック・ファンタジー小説。1979年9月の第1巻『豹頭の仮面』の刊行以来、コンスタントに巻数を重ね、100巻を越えてなお多くの読者を獲得しているベストセラー小説シリーズである。2022年1月時点で累計発行部数は3300万部を突破している[3]

自身の出生さえ分からない頭の戦士であるグインを主人公として、架空の世界、架空の時代に生きる、彼を中心とするさまざまな人物の生と死の波乱を描いたサーガ(大河小説)。国と国とのあいだで繰り広げられる戦争、策謀、興亡の歴史を背景として、その宮廷、あるいは市井に生きるさまざまな人物の野望、妄執、友情、決別、恋愛といった愛憎が織りなす壮大な人間模様を紡ぎだしていく。

作品史[編集]

ヒロイックファンタジーの執筆を準備していた栗本薫が高千穂遙の『美獣』を読み、予定していたキャラクターのインパクトの弱さを痛感して改めて本作を書き下ろすに至った。シリーズ開幕当初から正伝のみで全100巻という構想が明かされており[4]、2005年4月には第100巻となる『豹頭王の試練』が刊行された[5]。もっとも、100巻で構想通りには物語は完結せず[6]、それどころか、完結に至るまでにはまだ多くの展開が残されていることは確実で、どこまで続くかは作者自身にも予想がついていないとされていた。作者の死去により、正伝が130巻、外伝が22巻(上下巻1編を含むため23冊)刊行された時点で中断したが[7]、その後は複数の作家により執筆が再開され、続篇の刊行が続いている(詳細については、下記の「作者死去後の動向」を参照)。

発表形態としては、ハヤカワ文庫から書き下ろしで発売される(第1巻『豹頭の仮面』および外伝の一部は、先行して雑誌(主に『S-Fマガジン』)や関連書籍に掲載された)。表紙、口絵、本文イラスト加藤直之(正伝1 - 19巻、外伝1 - 5巻)、天野喜孝(正伝20 - 56巻、外伝6 - 9巻)、末弥純(正伝57 - 87巻、外伝10 - 16巻)、丹野忍(正伝88 - 、外伝17 - )が手がけている。

2003年には、アメリカ合衆国Vertical社より英語版の発売が開始された。続いて、2005年にはBlanvalet Taschenbuchverl社よりドイツ語版、Editrice Nord社よりイタリア語版、БИТВА В НОСФЕРУСЕ社よりロシア語版、2006年にはFleuve Noir社よりフランス語版の出版が開始された。2009年には大元C. I.社より朝鮮語版が3巻まで同時刊行で出版が開始されたものの、2010年の6巻を最後に事実上出版は中止、その後6巻全巻が絶版になった。中国語版の出版も予定されている。

2000年には柳澤一明の作画により、外伝『七人の魔道師』の漫画化が開始された。作品はメディアファクトリー発行の『コミックフラッパー』誌に2003年まで連載後、単行本化された。2006年9月にジャイブ社から出版された『栗本薫 THE COMIC グイン・サーガ』には沢田一の作画によって漫画化された正伝の一部が収録されており、2007年1月にはそれに新たに書き下ろしを加えたものが同社から『グイン・サーガ1』として出版された。その後、同社刊の漫画雑誌『月刊コミックラッシュ』で2008年4月号から2010年6月号まで新章が連載された。

著名な日本のファンタジー小説であるにもかかわらず、刊行開始以来30年弱にわたり映像化されなかったが、2009年4月にテレビアニメ化された(グイン・サーガ (テレビアニメ)を参照)。

作者死去後の動向[編集]

2009年5月26日、栗本がすい臓がんのため死去し、本作は未完成作品となった[8]。栗本は生前に病床で130巻のちょうど半分の地点まで原稿執筆を終えており[注 1]遺作となった第130巻「見知らぬ明日」(同年12月発売)まで予定通り刊行された(第2章第4節に「未完」の文字がある)。130巻あとがきで夫の今岡清は、新装版後書きでの栗本の「誰かがこの物語を語り継いでくれればよい」という言葉に心を動かされたこと、そしてグイン・サーガが今後さまざまな形で語り継がれてもよい、と発言している。なお、『グイン・サーガ・ワールド 5』での今岡のあとがきによれば、絶筆部分以降のプロットは残っておらず、今後の展開のための覚書のみが残されているという。

同年12月、このシリーズに日本SF大賞特別賞が[9]、翌2010年8月には星雲賞日本長編部門が与えられた。

2011年、早川書房は同年5月より雑誌形式の文庫本『グイン・サーガ・ワールド』を季刊ペースで刊行すると発表した。前述した「『グイン・サーガ』を様々な人に語り継いでもらいたい」という栗本の遺志を受け、久美沙織牧野修がグイン・サーガを外伝形式で執筆するほか、栗本の未完原稿の一部が公開された[10]

2012年9月に発売された『グイン・サーガ・ワールド 5』より、五代ゆう、宵野ゆめによる正編の続編の発表が行われ、2013年11月からは、この続編を文庫化した書籍が正編のナンバリングを受け継ぎ、第131巻「パロの暗黒」(五代ゆう)・132巻「サイロンの挽歌」(宵野ゆめ)として刊行された[11]。以降は随時続巻され、絶筆部分の直接の続きも133巻「魔聖の迷宮」(五代ゆう)より刊行される[12]という、複数作家による巨大なグイン・サーガ・ワールドの様を呈している。本作はかなりの長編作品となっており途中の巻で未読状態になってしまう読者も少なくないが、五代はどの巻から読み始めても前後が分かるように意識して書いていると自身のTwitterでコメントしている[6]

2013年〜2016年(131巻〜140巻)の間は奇数巻を五代ゆうが(主にパロ・ヤガ・沿海州の話を担当)、偶数巻を宵野ゆめが(主にケイロニアの話を担当)執筆した。2017年以降(141巻〜)は五代ゆうによる一人体制となっている。

あらすじ[編集]

首都クリスタルへのモンゴール軍の奇襲により、中原の歴史ある国パロは滅亡の危機に瀕していた。国王、王妃までもがモンゴール兵の手により殺害されるという状況の中、家臣はパロ王家に太古より伝わる古代機械(物質転送装置)を用いて、国王の長男にして王太子であるレムスと、その双子の姉リンダを友邦国アルゴスへ移送しようとした。が、古代機械の座標設定に狂いが生じ、2人はあろうことか敵勢力のまっただ中、モンゴール辺境にある魑魅魍魎の跋扈するルードの森へと転送されてしまった。

身を守るすべとてなく、ただ怯えて身を隠すしかなかったレムスとリンダを、ついにモンゴール軍の小隊が発見し、絶体絶命の危機に追いつめる。しかしその時、突如として現われた豹頭人身の異形の超戦士が小隊を全滅させ、双子は難を逃れる。自分自身の名と「アウラ」「ランドック」という2語を除き、全ての記憶を失っていたこの豹頭の男グインは、戦いの後で憔悴し切って倒れるが、リンダの介護によって間もなく体力を取り戻し、以後2人と行動をともにすることとなる。

死霊を始めとする魑魅魍魎の襲撃から、一夜の間は辛くも逃れた彼らだったが、翌朝には一帯を支配するモンゴールの出城・スタフォロス城の軍勢に再び発見され、衆寡敵せず投降を余儀なくされる。全身を業病に冒された「黒伯爵」こと城主ヴァーノン伯爵により投獄されたグインらは、隣の牢に収監されていた“紅の傭兵”の異名を持つ若き傭兵・イシュトヴァーンと出逢う。その夜、半獣半人の蛮族セム族がスタフォロス城に攻め入った混乱に乗じ、獄中でリンダと知り合ったセム族の娘スニを加えた4人は、スタフォロス城から眼下に流れる暗黒の河・ケス河へと身を投じて脱出に成功する。そして翌朝、彼らより先に脱出に成功していたイシュトヴァーンが一行に加わり、川の対岸・妖しい瘴気渦巻く砂漠の地ノスフェラスを最初の舞台として、レムスとリンダの、故国を目指す苦難の旅が始まるのである。(以上、第2巻『荒野の戦士』冒頭部まで)

登場人物[編集]

この物語の主人公は、タイトルが示す通りグインに他ならないが、物語はグインを含めた群像劇の要素が強く、それゆえ常にグインを中心に語られるわけではない。したがって、20巻以上にわたってグインが不在のままに物語が進行する場合もあり、その時には、他に主役級とされる登場人物や、中原の三大国をはじめとした諸国の宮廷、ときには庶民や脇役の視点までをも交えながら物語が展開することになる。

物語中、歴史はよく運命神ヤーンの織るタペストリーに例えられる。ヤーンは、物語のカギを握る人物を糸とし、彼らをたぐり寄せ、絡ませあうことによって、愛憎や因縁を生みながら、大きな運命の模様を描いていくのである。

世界観[編集]

話題[編集]

「豹頭の仮面」改訂版発行の経緯[編集]

第1巻「豹頭の仮面」に登場する、全身を極めて伝染性の高い業病に冒されたヴァーノン伯爵は、当初、その業病を「癩病」、人物の通称を「癩伯爵」と記されていた。だが、その病の描写が、本来の「癩病(ハンセン病)」のものとは著しく異なり、人々の間にいまだ流布している病に対する誤解とそれに基づく差別をさらに助長しかねないものであるとして、全国ハンセン病患者協議会より、作者及び出版社に対する抗議があった。

その抗議に対し、作者及び出版社は全面的に謝罪し、1982年3月以降の重版分から、作中の病の描写はフィクションとしてのものであり、実際の病とはまったく異なる関係のないものであることなどを記した文を巻末に註記することで、協議会と和解した。

その後、作者及び出版社は該当する部分について自主的に全面改訂を行い、「癩病」→「黒死病」、「癩伯爵」→「黒伯爵」等と書き換えた改訂版を1983年1月に発行し、以前の版を絶版とした。

ギネスブックへの申請[編集]

正伝第93巻が発行された2004年4月、早川書房米国の英語版を元に算出した3022万5000文字の「世界最長の小説」としてギネス・ワールド・レコーズ社に申請したが、1冊にまとめられた作品ではないという理由で却下された。早川書房は3000万文字以上の作品を1冊にまとめるのは事実上不可能であるとして、複数冊にわたる作品に関するカテゴリーの新設を求めたが、これも拒否された[13]

なお、ギネスブック認定[注 2]の世界最長の小説は、2004年版まではマルセル・プルーストの『失われた時を求めて』の960万9000文字、2005年版ではサイモン・ロバーツの『ニカーズ』[注 3]の1415万6074文字である[14]。2007年版では『失われた時を求めて』が「世界最長の小説」とされる[15]

百の大典[編集]

2005年4月9日、《グイン・サーガ》100巻達成記念イベント「百の大典」が、 九段会館にて開催された。

  • 第1部 栗本薫インタビュー
聞き手:小谷真理
ゲスト:高千穂遙
  • 第2部 歴代イラストレーター座談会
出席者:加藤直之天野喜孝丹野忍
司会:田中光
  • 第3部 中島梓ライブ
出演者:中島梓(p)、花木佐千子 (Vo)、山下弘治 (Bs)、岡田佳大 (Dr)
  • 第4部 グイン・サーガ・クイズ大会

来場者には、作品の表紙イラストをモチーフとした特製ポストカードなどが配布された。また、会場では、正伝第100巻『豹頭王の試練』特装版サイン本の販売が行われた。あわせて、グイン・サーガの電子出版およびグイン・サーガのアニメーション化についての発表が行われた。

直筆原稿電子化・閲覧[編集]

2010年、栗本の夫・今岡清は散逸防止のために約1万5千枚の『グイン・サーガ』直筆原稿を、栗本の生誕地である葛飾区区立中央図書館に寄贈した[16]。図書館は単に保存するだけではなく、数年をかけてスキャニングを行い、2013年4月から館内に設置した専用パソコンで電子ファイルとして閲覧できるようになった。これは閲覧専用であり、データのコピーや館外貸出しは不可能である。なお、全体の約10%程度が図書館のサイト内にある「かつしかデジタルライブラリー」にアップロードされており[17]、こちらは日本国中でインターネットにアクセス可能な環境があれば誰でも見ることができる。

評価[編集]

ウェブサイト「シネマトピックス」は本作について、「ヒロイック・ファンタジーの要素と『三国志』的な群像青春小説の要素を融合した、躍動感あふれる物語」であると表現している[5]。また同サイトは、多数の魅力的な登揚人物が様々な要素を含む劇的な物語展開のなかで翻弄され、成長や破滅をしていく様が描かれていると評している[5]

ウェブサイト「あにぶ」の井之上は本作の特徴について、「ページ全体において改行のないセリフで埋め尽くされており、小説を読むのが苦手な人は眩暈がするような紙面の黒さ」であるとしている[7]。また、同氏は本作の印象について、「本格的なシルクスクリーン絵画が挿し絵が美しくもなんとなく近寄りがたい」と述べている[7]

ゲームライター・編集者の石井ぜんじは上述の通り群像劇となっている点や異世界そのものを描き構築することが意識されている点が現代ファンタジーでも違和感のないゲーム世界的な感覚を覚え、これらの要素を鑑みると本作を「ライトノベルの元祖」と呼んでも不思議ではないと評している[18]

既刊一覧[編集]

関連作品[編集]

テレビアニメ[編集]

2009年4月から9月まで、NHK-BS2にて放送された[19]

書籍[編集]

解説本[編集]

  • 『グイン・サーガ・ハンドブック』 ハヤカワ文庫、1990年11月15日発行、ISBN 4-15-030335-5
    • 累計1000万部突破を記念して出版された解説本。正伝1 - 34巻、外伝1 - 8巻をもとにした人名事典、グイン・サーガ研究、中原世界Q&A、キレノア大陸観光案内などの他、グイン・サーガより遥かな未来を舞台とした短編『悪魔大祭』が収められている。
  • 『グイン・サーガ・ハンドブック1』 ハヤカワ文庫、1999年6月15日発行、ISBN 978-4-15-030617-5
    • 上記『グイン・サーガ・ハンドブック』の改訂版。
  • 『グイン・サーガ・ハンドブック2』 ハヤカワ文庫、1999年7月31日発行、ISBN 978-4-15-030621-2
    • シリーズ開始20周年を記念して出版された解説本。正伝35 - 66巻、外伝9 - 15巻をもとにした人名事典、正伝1 - 66巻、外伝1 - 15巻をもとにした用語事典、グルメ、魔道、前史に関するグイン・サーガ研究などの他、20歳のアルド・ナリスを主人公とした短編『クリスタル・パレス殺人事件』が収められている。
  • 『グイン・サーガ・ハンドブック3』 ハヤカワ文庫、2005年4月15日発行 ISBN 978-4-15-030790-5
    • 第100巻刊行を記念して出版された解説本。正伝67 - 100巻、外伝16 - 19巻をもとにした人名・用語事典、五大都市研究などの他、「煙とパイプ亭」のゴダロ一家を主人公とした短編『アレナ通り十番地の精霊』が収められている。
  • 『グイン・サーガ・ハンドブックFinal』 ハヤカワ文庫、2010年2月15日発行、ISBN 978-4-15-030982-4
    • 著者の死去を受けて出版された解説本。小谷真理による作品論、全作品を網羅した人名・用語事典、全ストーリー紹介が収められている。
  • 『グイン・サーガ読本』 早川書房、1995年11月15日発行、ISBN 978-4-15-207968-8
    • 第50巻刊行を記念して出版された解説本。正伝1 - 50巻、外伝1 - 8巻をもとにした人名辞典、ストーリーガイドなどの他、外伝『黄昏の国の戦士 第一部 幽霊島の戦士』、グイン・サーガの原形となった中編『氷惑星の戦士』が収められている。
  • 『グイン・サーガ・オフィシャル・ナビゲーション・ブック』 早川書房、2004年9月30日発行、ISBN 978-4-15-208592-4
    • シリーズ開始25周年を記念して出版された解説本。キャラクター人気投票結果に合わせたキャラクター紹介、戦争および恋愛から読み解くグイン・サーガなどの他、外伝『鏡の国の戦士 第一話 蛟が池』が収められている。
  • 『別冊宝島 グイン・サーガ PERFECT BOOK 剣と魔法と愛の世界のすべてがわかる!!』 宝島社、2004年2月27日発行、ISBN 4-7966-3920-9
    • ヴィジュアルを重視して作成された解説本。キャラクター大辞典、魔道辞典、イラストレーション・コレクションなどの他、ミュージカル『グイン・サーガ 炎の群像』脚本が収められている。
  • 『グイン・サーガの鉄人』 早川書房、2009年7月15日発行、ISBN 978-4-15-209052-2
    • シリーズ開始30周年を記念して出版されたクイズ形式の解説本。正伝1 - 127巻、外伝1 - 21巻からストーリーに沿った問題が100問出題されており、解答と合わせて物語に関する詳細な解説が収められている。
  • 『グイン・サーガ PERFECTBOOK for ANIMATION』 宝島社、2009年10月6日発行、ISBN 4-7966-6961-2
    • アニメ『グイン・サーガ』のファンブック。ワールドガイド、キャラクター図鑑、ストーリーガイドが掲載され同年放送されたテレビアニメーションの補完をしている。

漫画[編集]

画集[編集]

  • 天野喜孝 『天野喜孝 グイン・サーガ画集』 早川書房、1996年3月15日発行、ISBN 978-4-15-207984-8
  • 末弥純 『末弥純 グイン・サーガ画集』 早川書房、2003年9月30日発行、ISBN 978-4-15-208514-6
  • 加藤直之 『加藤直之 グイン・サーガ画集』 早川書房、2010年3月25日発行、ISBN 978-4-15-209120-8
  • 丹野忍 『丹野忍 グイン・サーガ画集』 早川書房、2010年5月25日発行、ISBN 978-4-15-209125-3

天狼叢書[編集]

作者の個人事務所である「天狼プロダクション」発行の、同性愛をモチーフとする作品を収めた個人誌「天狼叢書」に、番外編として以下のものが収められている。

  • 『ローデス・サーガ 南から来た男(上・下)』1999年12月31日発行
    • ケイロニアの盲目の選帝侯、「黒衣のロベルト」ことローデス侯ロベルトを主人公とした『ローデス・サーガ』の第1巻。ロベルトと黒人の逃亡奴隷ブライ、ベルデランド侯ユリアスとその弟レグルスの愛憎劇が描かれている。
  • 『ローデス・サーガ 眠り姫の夜 風が丘恋唄1』2000年12月31日発行
    • 『ローデス・サーガ』の第2巻。ロベルトとケイロニア皇帝アキレウスとの交情を中心とした物語が描かれている。
  • 『マルガ・サーガ 凶星』2000年8月15日発行
    • マルガで隠遁生活を送っていた頃のナリスとヴァレリウスとの愛憎劇を中心とした物語。5編の短編が収められている。
  • 『マルガ・サーガ2 みずうみ』2009年12月30日発行
    • 『マルガ・サーガ 凶星』の続編。5編の中短編が収められている。

同人誌[編集]

以下の作者の個人同人誌に、いくつかの番外編が収められている。

  • 『FULLHOUSE 1』1990年12月23日発行
    • 同性愛をモチーフとした同人誌第1巻。
  • 『FULLHOUSE 2』1992年8月15日発行
    • 同性愛をモチーフとした同人誌第2巻。
  • 『FULLHOUSE 3』1996年8月26日発行
    • 同性愛をモチーフとした同人誌第3巻。
  • 『FULLHOUSE 4』1997年10月3日発行
    • 同性愛をモチーフとした同人誌第4巻。
  • 『FULLHOUSE Special 2 中島梓脚本集』1995年11月9日発行
    • 作者の舞台(「マグノリアの海賊」 / 「グイン・サーガ 炎の群像」)脚本集第2巻。
  • 『VALERIUS MAGAZINE』1985年8月11日発行
    • 作者自身が会長をつとめたヴァレリウス・ファンクラブの会誌。
  • 『浪漫之友』2005年4月1日創刊
    • 同性愛をモチーフとした季刊同人誌。

その他[編集]

グイン・サーガと共通する世界、異なる時代を舞台とした物語としては、以下のものがある。

  • 『トワイライト・サーガ 1 カローンの蜘蛛』 光風社出版、1983年8月15日発行、ISBN 4-87519-453-6 / 角川文庫、1986年6月10日発行、ISBN 4-04-150015-X
  • 『トワイライト・サーガ 2 カナンの試練』 光風社出版 1984年8月20日発行、ISBN 4-87519-453-6 / 角川文庫、1986年6月25日発行、ISBN 4-04-150015-X
    • グイン・サーガの未来を舞台とした物語。闇王国と化したパロスの美貌の王子ゼフィールと、それに従うトルース出身の戦士ヴァン・カルスとの放浪譚。2巻あわせて10編の連作中短編が収められている。詳細についてはトワイライト・サーガを参照のこと。
  • パロスの剣』 角川文庫、1989年10月25日発行、ISBN 4-04-150029-X
    • グイン・サーガの過去を舞台とした物語。隣国カウロスの脅威に立ち向かう、男装の王女エルミニアと、伝説の宝剣「パロスの剣」にまつわる物語を描いている。
    • もともとは漫画『パロスの剣』(いがらしゆみこ画 / あすかコミックス、中央公論社、中公文庫、フェアベル)の原作として描かれたものを、のちに小説化したもの。

グイン・サーガとは異なる世界を舞台としているが、グイン・サーガとのなんらかの関連を思わせる描写のある作品としては、以下のものがある。

  • 『魔境遊撃隊 第二部』 角川文庫、1984年9月25日発行、ISBN 4-04-150006-0 / ハルキ文庫、1998年8月18日発行、ISBN 4-89456-434-3
    • 南海の孤島を舞台とした異境冒険譚の後編。作者と同じ名前を持つ主人公が、島に残された古い神殿に、豹頭の王の事績が描かれた壁画を発見する場面があり、それをきっかけとしてグイン・サーガを書き始めた、という記述がある。
  • 魔界水滸伝』(正伝20巻、外伝4巻)(カドカワノベルズ、角川文庫、ハルキホラー文庫)
    • クトゥルー神話を題材として、クトゥルーの神々、日本を中心とした地球の神々、人類の三つどもえの戦いを描いた伝奇SF。イロン写本、大導師アグリッパなど、グイン・サーガと共通するアイテムや人物が登場する。
  • 新・魔界水滸伝』(1 - 4巻)(角川文庫)
    • 『魔界水滸伝』から5000年後の銀河を舞台とした続編。カイザー転送装置、ファイファ・システムや、半獣半人の種族が支配する銀河帝国など、グイン・サーガと共通するアイテムや設定が登場する。

なお、1995年に発売された『グイン・サーガ読本』(早川書房)では、いのまたむつみが「グイン・サーガは将来的には新・魔界水滸伝とクロスする」という主旨の文章を掲載している。

イメージアルバム[編集]

グイン・サーガのストーリーをもととして、映画のサウンドトラック風に音楽化した作品。全て日本コロムビアより発売。

作曲・編曲は淡海悟郎。『グラフィティ』の1曲を栗本薫、『炎の群像』の全曲を中島梓が作詞している。また『炎の群像』の一部楽曲は中島梓の作曲による。

タイトル 収録曲 演奏 発売日 備考
辺境篇 淡海悟郎&ビッグ・マウス 1983年10月21日 正伝1 - 5巻のストーリーを音楽化。
陰謀篇 1984年9月21日 正伝6 - 10巻のストーリーを音楽化。
戦乱篇 淡海悟郎&ビッグ・マウスwith大魔道管弦楽団 1985年3月21日 正伝11 - 16巻のストーリーを音楽化。
グラフィティ 1985年12月21日 主役級の登場人物8人をテーマとした楽曲が収められている。
「《GUIN》with Panther Head」の作詞は栗本薫。
七人の魔道師 淡海悟郎と怨霊楽団 1986年9月1日 外伝1巻のストーリーを音楽化。
氷雪の女王/時の封土 LEGEND (DISC I)、淡海悟郎 (DISC II) 1993年10月21日 外伝4、5巻のストーリーを音楽化。2枚組。
イリスの石 淡海悟郎 1994年9月21日 外伝2巻のストーリーを音楽化。
ノスフェラスの嵐 淡海悟郎 (1 - 5)、LEGEND (6 - 8) 1995年1月1日 正伝19、24巻(第4話)のストーリーを音楽化。
ケイロニア篇 チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 1995年7月21日 正伝17、18、20 - 23巻のストーリーを音楽化。
炎の群像 - 1995年11月1日 1995年上演のミュージカルに使用された楽曲集。
光の公女 淡海悟郎 (3,5,7)、LEGEND (1,2,4,6,8) 1996年10月1日 正伝24、26、27、31巻のストーリーをもとにして、
イシュトヴァーンによるアムネリス救出劇を中心として音楽化。
幽霊船 淡海悟郎 1997年5月21日 外伝3巻のストーリーを音楽化。

限定ボックス[編集]

  • 『グイン・サーガ クロニクル』 トイズワークス
    • 正伝70巻までと外伝16巻までの全ての挿絵を収めたハードカバーと、日本コロムビアより発売されたイメージアルバム全12タイトル13枚を収録した限定ボックス。2001年3月予約受付、同年5月発送。
  • 『グイン・サーガBOX PANDORA』 早川書房、2006年9月30日発行、ISBN 978-4-15-600002-2
    • 『グイン・サーガ・オフィシャル・ナビゲーション・ブック』表紙イラストを立体化したフィギュア、グイン・サーガ世界の地図、トレーディング・カード、外伝「ヒプノスの回廊」収録の小冊子などを収録した限定ボックス。

ゲーム[編集]

ゲームブック[編集]

  • 多摩豊 『グイン・サーガ 1 ラルハスの戦い』 ハヤカワ文庫GB、1986年12月15日発行、ISBN 4-15-090001-9
    • 正伝第1巻から第16巻を題材としたアドベンチャー・ゲームブック。

コンピュータゲーム[編集]

ボードゲーム[編集]

  • 『グイン・サーガ』 ツクダホビー
    • 正伝第1巻から第16巻を題材にし、モンゴール軍とグインたち、ラゴン、セムとの戦闘を取り扱ったウォー・シミュレーションゲーム(ボードゲーム)。ノスフェラスを舞台として、グインたちとセム、ラゴン連合軍対モンゴール軍の戦いをゲーム化した「ノスフェラス」と、パロとゴーラ、ノスフェラスの一部を舞台として、パロ軍対モンゴール軍の戦いをゲーム化した「パロ」の、2つのゲームが収められていた。

テーブルトークRPG[編集]

  • 『グイン・ワールド』 ツクダホビー
    テーブルトーク・ロールプレイングゲーム『ローズ・トゥ・ロード』のヴァリアント・ゲーム。『ローズ・トゥ・ロード』のルールを基本とし、セットには『ローズ・トゥ・ロード』のルールブックが同梱されていた。それに加えて、多摩豊デザインによる、グイン・サーガ世界用の追加ルールやデータの冊子、マップ類などを追加して、グイン・サーガをロールプレイで楽しむことができるようにしたもの。シナリオとして「キタラの秘密」が収められていた。

ミュージカル[編集]

マグノリアの海賊[編集]

1991年1月18日から27日までの10日間に、新宿シアターアプルにて、昼夜合わせて14公演が行われた。

キャスト
  • イシュトヴァーン(若き海賊団の首領):後藤宏行
  • ナナ(ダリアの町の踊り子):春風ひとみ
  • ルネ(男装の騎士。シリア姫の護衛係):マッハ文朱
  • シリア姫(ダリア大公の一人娘):平吉佐千子
  • ラン(イシュトヴァーンの一の子分):川平慈英
  • 大公(ダリアの島の支配者):治田敦
  • リサ(かもめ亭のおかみ):木月京子
  • リオ(島の歌手):よしろう広石/峯藤高(ダブルキャスト)
  • ダグ(イシュトヴァーンの子分):西沢仁
  • パック(イシュトヴァーンの子分):ハマン
  • アマリア(ダリアの町の娘):杉本亜利砂
  • ミア(ダリアの町の娘):藤原満美子
  • エリ(ダリアの町の娘):国分美和
  • ダン(ダリアの人):岡本順太郎
  • ならず者:大塚敏民
  • ルー(海賊):長南賀信
  • リナ(踊り子):上月真琴
スタッフ
  • 原作:栗本薫
  • 脚本・演出・音楽:中島梓
  • 衣裳デザイン:天野喜孝
  • 作詞:アンあんどう/中島梓
  • 音楽監督:栗田信生
  • 振付:名倉加代子
  • 美術:下山次郎
  • 照明:三上良一
  • 音響:大野雅美
  • 衣裳:菊田光次郎

グイン・サーガ炎の群像[編集]

グイン・サーガ50巻記念作品として制作された。正伝第1巻から第16巻を題材としてミュージカル化。モンゴールのパロ占領、レジスタンス等によるモンゴール敗退までを描く。ただし、舞台はパロに限られており、ノスフェラスのエピソードは登場しない。本来、主人公であるはずのグインも、人間で演ずることは不可能であるとして登場していない。

  1. 1995年11月9日 - 26日:東京 シアターアプル
  2. 1995年12月1日 - 10日:大阪 シアター・ドラマシティ
主要スタッフ
  • 原作:栗本薫
  • 脚本、作曲、作詞、演出:中島梓
  • 作曲、音楽監督:淡海悟郎
  • 美術監督:天野喜孝
主要キャスト

オーディオブック・朗読版[編集]

株式会社アールアールジェイより、朗読サイト「kikubon(キクボン)」にて朗読版が2017年4月から発表されている[20]。読み手は下山吉光浅井晴美[20]。2021年1月現在、正伝7巻までの7冊が配信中。シリーズページと1巻の責任者コメントによると、外伝を含めた全巻の朗読化が予定されているとのこと。

コラボレーション[編集]

東京(神田)の早川書房1階にある「カフェ クリスティ」では「バー・ロング・グッドバイ」「パブ・シャーロック・ホームズ」「PKD酒場」「カフェ エルキュール・ポアロ」「カフェ アルジャーノンに花束を」「居酒屋グイン亭」など様々なコラボレーションが展開されている[21]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 出版直前に書いていた単行本のエピグラムとあとがきは127巻が絶筆となった。
  2. ^ 非現実の王国で』はさらに長い、一人の作家による単一(シリーズではなく分冊)の小説作品[要検証]ではあるが、全てが刊行されていない。
  3. ^ Knickers, ISBN 978-0954460501

出典[編集]

  1. ^ 山中智省『『ドラゴンマガジン』創刊物語 ライトノベル史入門 狼煙を上げた先駆者たち』勉誠出版、2018年1月31日、168頁。ISBN 978-4-585-29149-7 
  2. ^ 石井ぜんじ / 太田祥暉 / 松浦恵介『ライトノベルの新・潮流 黎明期→2021』スタンダーズ、2022年1月1日、22頁。ISBN 978-4-86636-536-7 
  3. ^ 石井ぜんじ / 太田祥暉 / 松浦恵介『ライトノベルの新・潮流 黎明期→2021』スタンダーズ、2022年1月1日、21頁。ISBN 978-4-86636-536-7 
  4. ^ “グイン・サーガ 100巻までを2冊に収納 巨大豪華限定本発売”. アニメ!アニメ!. (2009年5月6日). https://animeanime.jp/article/2009/05/06/4599.html 2022年6月18日閲覧。 
  5. ^ a b c “小説『グイン・サーガ』100巻発刊記念!アニメ映像化を始めとする「グイン・サーガ・プロジェクト」始動!!”. シネマトピックス. (2005年4月9日). http://www3.cinematopics.com/archives/41159 2022年6月18日閲覧。 
  6. ^ a b “作者死去で未完の「世界最長」小説 「グイン・サーガ」に続編登場”. JCASTニュース. (2013年11月4日). https://www.j-cast.com/2013/11/04187994.html?p=all 2022年6月18日閲覧。 
  7. ^ a b c “大長編ヒロイックファンタジー小説「 グイン・サーガ 」。読むのが辛い!という人はアニメでいかが?”. あにぶ. (2016年1月29日). https://anibu.jp/29jan2016-guinsaga-24613.html 2022年6月18日閲覧。 
  8. ^ “栗本薫さんが死去”. ITメディアニュース. (2009年5月27日). https://www.itmedia.co.jp/news/articles/0905/27/news043.html 2022年6月18日閲覧。 
  9. ^ “日本SF大賞授賞式 故人となった伊藤計劃、栗本薫両氏を讃える”. アニメ!アニメ!. (2010年3月6日). https://animeanime.jp/article/2010/03/06/6153.html 2022年6月18日閲覧。 
  10. ^ 『グイン・サーガ・ワールド』刊行のお知らせ”. ハヤカワ・オンライン. 早川書房 (2010年12月24日). 2011年1月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年2月2日閲覧。
  11. ^ “グイン・サーガ:作者死去で未完の世界最長小説 意志を継ぎ本編の続編再開”. MANTANWEB. (2013年10月31日). https://mantan-web.jp/article/20131031dog00m200055000c.html 2021年1月22日閲覧。 
  12. ^ 魔聖の迷宮”. 早川書房 ハヤカワ・オンライン. 2016年3月16日閲覧。
  13. ^ “ギネス“未認定”の最長小説”. YOMIURI ONLINE (読売新聞社). (2004年11月5日). オリジナルの2013年8月28日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/S2d34 
  14. ^ Simon Roberts Publishing(2008年1月23日時点のアーカイブ) - このサイトで『ニカーズ』の全文のPDFファイルが公開されている。
  15. ^ 日本語版『ギネス世界記録2007』p.161
  16. ^ “葛飾区の図書館で「デジタルライブラリー」開始-グイン・サーガの自筆原稿も”. 葛飾経済新聞. (2013年4月23日). https://katsushika.keizai.biz/headline/886/ 2022年6月18日閲覧。 
  17. ^ デジタル地域資料|葛飾区立図書館
  18. ^ 石井ぜんじ / 太田祥暉 / 松浦恵介『ライトノベルの新・潮流 黎明期→2021』スタンダーズ、2022年1月1日、22頁。ISBN 978-4-86636-536-7 
  19. ^ グイン・サーガ”. NHKアーカイブス. 2024年4月17日閲覧。
  20. ^ a b 全150巻を超える人気シリーズ『グイン・サーガ(著:栗本薫)』を声優の声を演技で朗読を楽しむキクボンにて配信開始。」『PR TIMES』、株式会社アールアールジェイ、2017年4月25日https://www.dreamnews.jp/press/0000151701/2022年6月18日閲覧 
  21. ^ “あのカラム水や肉まんじゅうが現実に! 「居酒屋グイン亭」でグイン・サーガファンは満腹に”. ITmedia eBook USER. (2015年5月20日). https://www.itmedia.co.jp/ebook/articles/1505/20/news041.html 2022年6月18日閲覧。