ハイハマボッス

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ハイハマボッス
福島県会津地方 2020年8月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Agiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
: ツツジ目 Ericales
: サクラソウ科 Primulaceae
: ハイハマボッス属 Samolus
: ハイハマボッス
S. parviflorus
学名
Samolus parviflorus Raf.[1]
和名
ハイハマボッス(這浜払子)[2]

ハイハマボッス(這浜払子、学名Samolus parviflorus)は、サクラソウ科ハイハマボッス属の多年草[2][3][4][5]。別名、ヤチハコベ[1][2][5]

特徴[編集]

は細く、分枝し、斜上して、高さは10-30cmになる。全体に無毛。根出葉は長い葉柄がある。茎は互生し、葉身は倒卵形または広楕円形で、長さ2-6cm、幅1-2cm、先端は円く、縁は全縁、基部は狭まって細い葉柄となる。上部にいくにしたがって葉は小さくなる。葉質はやや膜質で、裏面に赤褐色の細点が散在する。大きい個体は倒伏する傾向がある[2][3][4][5]

花期は6-8月。茎の先に総状花序をつけ、まばらに10-20個の白いをつける。花柄は長さ1-2cmになり、細く、斜開し、途中に披針形の小がある。は鐘形で先は5裂し、子房と合着する。花冠は径2-3mmと小さく、5裂し、短い花筒がある。雄蕊は5個、花冠裂片と互生の位置に仮雄蕊が5個ある。果実は球形の蒴果で径2.5mmになり、先が5裂して種子を散らす[2][3][4][5]

分布と生育環境[編集]

日本では、北海道(石狩地方以南)[2]、本州(東北地方、千葉県、日本海側)に分布し[3]、海岸付近の湿地だけでなく、内陸の山地の湖や池沼のほとりの湿地、渓流畔などに稀に生育する[3][4][5]。日陰でやや湿った環境を好む[3]。国外では、北アメリカに分布する[4][5]

名前の由来[編集]

和名ハイハマボッスは「這浜払子」の意[2]オカトラノオ属ハマボッス(浜払子)に似て、茎がやや地を這うのでいう[4][5]

種小名(種形容語) parviflorus は、「小型の花の」の意味[6]

ギャラリー[編集]

保全状況評価[編集]

準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト

(2019年、環境省)

ハイハマボッス属[編集]

ハイハマボッス属(ハイハマボッスぞく、学名Samolus)は、サクラソウ科。世界に約10種知られ、多くは南半球の海岸に分布し、2種が北半球の温帯の海岸に分布する[5]

海岸などに生える無毛の多年草。茎は斜上し、葉は互生する。葉は線形または倒卵形で、縁は全縁。茎の上部に総状花序をつけ、まばらに小さな花をつける。花柄の途中に苞がある。雄蕊は5個、仮雄蕊が5個ある。子房は中位で萼と合着し、球形になる。種子は四面体状楕円形となり、稜があり、表面は滑らか[5]

なお、YListFlora of North America. では、日本と北アメリカに分布する Samolus parviflorus Raf. (和名:ハイハマボッス)を独立種として扱っている[1][7]が、The Plant List では主としてヨーロッパに分布する Samolus valerandi L.(英語)のシノニムとしている[8]。また、Tropicos では、同種の亜種 S. valerandi subsp. parviflorus (Raf.) Hultén として扱っている[9]

脚注[編集]

  1. ^ a b c ハイハマボッス 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b c d e f g 『新北海道の花』p.115
  3. ^ a b c d e f 『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプランツ 増補改訂新版』p.203
  4. ^ a b c d e f 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.911
  5. ^ a b c d e f g h i 『改訂新版 日本の野生植物 4』p.201
  6. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1506
  7. ^ Samolus parviflorus, Flora of North America.
  8. ^ Samolus valerandi, The Plant List.
  9. ^ Samolus valerandi subsp. parviflorus, Tropicos.

参考文献[編集]